宝条をひたすらダラダラ喋らせたかっただけ

「今までに遭ったヘンな事なあ。そらここ一年いろいろあったよ?
 まず最初は何も見えへん狭いとこに閉じ込められたことやね。ヤーさんが僕をコンテナん中突っ込んで海外に売り飛ばすつもりなんか思てほんまびびったわ。でも結局あそこなんやったんやろうね? よう分からんまま気ぃついたら部屋におるし。
 恭弥君と会うたのもそこでやったかな。なんつーか、タチの悪い天然のおっさん。どこをどう解釈したら霜降り肉がつくしになるんか問い詰めたいわ。あとよっくんも飼い始めた。もふもふしてかわええしいざという時は非常食にゲフンゲフン!

 で、次のヘンな事っちゅうか何ちゅうか……恭弥君がバグったとか何とかで車に押し込まれて白神町っちゅうド田舎に連れてかれたね。あん時のアキちゃんの札束ビンタは思わず『姐さん!』って呼んでもうたわ。
 あ、恭弥君のバグね。元からどっかおかしいおっさんやとは思ってたけど、磨きがかかっとったわ。誰やねんチャドって。ナイフとか犬とか何でもかんでもチャドって呼ぶなや。
 恭弥君との再会は別に嬉しないけど、アキちゃんと会えたのはよかったなー。ちょっとキツい性格やけどなんやかんやで面倒見てくれるし。鍵屋せんせと神部せんせもチョロいやいやいやええ人やし。シロちゃんもあれは将来有望やで。笑うたら絶対かわええ。

 アキちゃんと鍵屋せんせがバスツアー行くからついてったのはそっから割とすぐやったかな。マリちゃんとハル君と会うてまあ色々ありましたわー。イカとかタコが暫く食われへんかったからね。相当や。
 マリちゃんはなー。かわええよなー。天然でほわほわしてて癒しを体現した感じ。料理もめっちゃ美味しいし。ちょっと頼んだらすぐに寝床とご飯を用意してくれそうで、ほんまええ子。
 でもハル君が怒ったら怖いからなーんもしてへんよ。ハル君はええ奴やと思うけど、しれっと銃撃つし、僕に突き付けてくるし、なんかえらい嫌われてもうたなあ。

 そうそう、犬耳が生えたこともあったなあ。あん時は神部せんせと恭弥君、あと梓……君、と一緒やったね。恭弥君のバグは結局治るどころか悪化してた。それに神部せんせが冴姐さんと付き合うてたとか初耳でびっくりしたなあ。世の中って意外と狭い。
 ここで会うた杏ちゃんもシロちゃんと同じく将来有望! お母さんがちょい怖いけど杏ちゃん本人が僕に懐いてくれてるし、上手いこといったら五~六年後には……いやいややましい事は考えてへんよ? うんうん。
 あと恭弥君ってホモなん? 別にそれはそれでええんやけど、僕を巻き込まんとってほしい。ほんまに。

 夏は横石君に会いに喜多島にバカンスに行ったなー! 惜しむらくはバカンスのメンバーが司君、イアン先生、灰塚のおっさんと華も色気もないむさ苦しさやったことや。
 理恵子さんの水着姿はそら綺麗やったけど……あかん……あの人めっちゃ怖かった……。
 怖い目に遭うたけど、横石君はなんとか一命を取り留めたし、司君やイアン先生みたいなデキる人とコネが出来たのはよかったなあ。……おっさん? あー、うん、よかったよかった。

 そうそう、白神町に久しぶりに行った時もハル君とちょっと色々あったなあ。あんな目にはもう遭いたないわ。
 しっかしハル君は僕の何がそんなに気に入らへんのやろうね? 僕ハル君の事そんな嫌いやないんやけどなあ。そら真面目君やし僕のやる事なす事によう怒るけど、僕の性根や考え方を説教して叩き直すような真似はせえへんやん。そういうとこ、真面目君にしてはええなあって。
 ……言うとくけどホモちゃうからな! こんときの誤解解くのホンマしんどかったんやから! ハル君とか鍵屋せんせ落とすくらいやったらマリちゃんとシロちゃん落とすわ!!」