エスの侵食(えすのしんしょく)

このシナリオは「クトゥルフ神話TRPG(第6版)」に対応したシナリオです。

推奨人数2~4人
推奨技能目星、聞き耳、言いくるめ、信用、図書館
準推奨技能説得、鍵開け、忍び歩き
戦闘有無基本的になし
所要時間約12時間(オンラインによるテキストセッション)

複数回使用する機会がある、または生還やある程度の情報取得に必要な技能を「推奨技能」、1回は使用する機会がある、またはさらなる情報を得るために必要な技能を「準推奨技能」と区分しています。

なお、所用時間はテストプレイを行った際にかかった時間です。
KPもPLも茶番好きかつ慎重なプレイスタイルのため、進行の仕方によっては所用時間が前後します。あくまで目安程度でどうぞ。

記法

シナリオの見方をご確認ください。

Copyright

本作は、「株式会社アークライト」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright (C)1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION

01.あらすじ

とある町で開催された、夜のホテルを舞台にした脱出ゲーム。
その評判を聞きつけてゲームに参加した探索者達はチームを組んで楽しんだ。
つつがなくゲームを終えた探索者達は、そのままホテルで宿泊する。

……翌日、目が覚めた探索者達はすぐに気付く。
男から女へ。女から男へ。
性別が変わっている、という事に。

※これ以降はシナリオのネタバレが含まれます。ご注意ください。

02.索引

概要
01.あらすじ
02.索引
03.背景
04.全体の流れ、固定イベント
05.ホテル
06.図書館
07.病院
08.探偵事務所
09.出版社
10.株式会社G.R.S
11.エンディング
12.報酬
13.神話生物ステータス
14.利用規約・更新履歴

03.背景

シナリオ概要

後天的性転換(本人の性自認や記憶は元のまま、性別だけ変わる)をしてしまった探索者が、それを解決すべく奔走するシナリオ。
性転換は探索者の身体に起きた異常の初期段階であり、放置しておくと探索者は人間ではないものに変貌してしまうだろう。
シナリオ内で設定された性転換に起因する茶番展開は少なめだが、KPやPLの嗜好に合わせて自由に追加して良い。

シナリオに含まれる要素

性転換、嘔吐、殺傷、恐怖、NPCの死、他者を犠牲にした生還、異形化

このシナリオには上記の要素が含まれているが、事前にPLに知らせるかどうかはKPの任意。
要素としての度合いが薄いもの、行動によっては発生しないものも存在するため、PLから相談があった場合はシナリオ本文を見て適宜対応すること。
また、これはシナリオ作者の主観で要素をリストアップしたものだ。ここにはないがPLに知らせたい要素があれば自由に付け加えて良い。

背景情報

その町には「株式会社G.R.S」という遺伝子検査・研究を生業とした会社があった。
表向きは検査や研究だけでなく、一般人に対して遺伝子工学についての周知活動も行う中堅企業である。
しかしその実態は「多数の優秀な人間の遺伝子情報を組み合わせて完璧な人間を生み出す事」を目的としたカルト集団だった。

周知活動の一環として月に一度開催している脱出ゲームもカルト活動の一環。
ゲームを通じて参加者の能力を計り、優秀な成績を収めたものの遺伝子情報を採取する事が目的である。

かつては毛髪の採取など平和的な方法で遺伝子情報を収集していたが、とあるショゴスロードの召喚・従属の成功に伴い、より効率的な方法で採取をするようになった。

探索者は不幸にも脱出ゲームで優秀な成績を収めてしまい、採取の対象になってしまう。
採取の副作用で体に起きた変調は日毎に進行し、三日を過ぎる頃には探索者は探索者でなくなってしまう。
そうなる前に、原因を探りだし変調を食い止める事が本シナリオでの主な目的となる。

(脱出ゲームの参加者、という前提が難しければ変えて頂いて構いません。
しかし、あらすじ上「不特定多数の中から優秀な人を抽出する」という目的が達成できる内容にして下さい。)

集積体S-45号(通称エス)

株式会社G.R.Sによって召喚、従属されたショゴスロード。
ショゴスロードの中でも体は小さく、基本的に少女に擬態している。
人間の欲望に興味があり、積極的に人間に力を貸している。

自身の肉体をとても器用に操る事が出来る。
「ショゴス細胞を食べた人間は小型のショゴス(虫ショゴス)に変化する」
これが基本なのだが、彼女(?)はそれをある程度コントロールする。

株式会社G.R.Sの欲望(完璧な人間を生み出す)に協力するため、彼女は己の肉を分け与え、それを優秀な人間に食わせればいいと進言した。
通常であれば肉片は時間をかけて内臓と一体化し、寄生が完了するのだが、彼女は肉片を操り胃の中に留まり続け、体内から人間の生体情報を回収する事が出来た。

しかし、どれだけ肉片を操作しても人間の肉体に影響が出る事は避けられない。
生体情報の回収を始めた瞬間から肉体への影響は現れ、また通常の寄生とは異なる行動をしているからか影響の現れ方、速度は異なっていた。
端的に言えばまず性別が変わり、五感に異常をきたし、狂気に陥った後に虫ショゴスに変化してしまう。

株式会社G.R.Sの欲望を知り、それなりの月日が経った今、彼女はG.R.Sを離れたいと思っているが、従属の呪文によって強制的に奉仕させられている。
故に彼女は肉片を通じて外部の人間と接触を図り、脱出の機を窺い続けている。

04.全体の流れ、固定イベント

【導入:性別の変化】終了後、探索者達は性転換の原因を探る為に動き出す事になる。
探索は午前に1か所、午後に2か所まで。
1か所につきそれぞれ1度ずつ技能ロールが可能。
〈心理学〉〈言いくるめ〉〈信用〉など会話中に発生するものは、会話が収束するまでの間は何回でも可能。

また、宿泊やその他のイベントで出費が発生する為、事前に探索者の所持金、クレジットカードの有無など確認しておく事を推奨。
(この要素は任意です。面倒であれば省略して構いません)

各探索箇所でのイベントは【05.ホテル】以降を参照。
ここでは探索箇所によらない、固定のイベントについて記す。

導入:性別の変化

INFO / EVENT

眠りに就いた探索者達は、体が妙に熱く、そして重い事に気付く。
風邪でも引いたのだろうかと思うかもしれない。
しかし深夜に助けを求めて病院に行く程のものでもなく、探索者達はそのまま眠りに就いた。

……翌日、目が覚めた探索者達は寝る前に感じた熱さや重さがきれいに消えている事に気付いた。
それと同時に例えようもない違和感。なんとなく自身の体に触れてみた探索者達はすぐに理解するだろう。

――男から女へ、女から男へ、性別が変わってしまっている、という事に。

★正気度喪失【1/1D6】

1日目朝に発生。
性転換による正気度喪失の他に、以下の通りステータス変動が発生する。

男性→女性【1D3】のSTR減少・CON減少・DEX増加
女性→男性【1D3】のSTR増加・CON増加・DEX減少

性転換を経て探索者達が合流した時点で【イベント:服の調達】に移行。

イベント:服の調達

1日目午前に発生。午前はこのイベントで消費される為、1日目の探索は2か所のみとなる。

性転換によって体型が変わった探索者は、着ていた服のサイズが合わなくなる。
他の探索者の服を借りる等の案が無い限り、駅前のショッピングモールに赴いて服を調達する。

服屋にて〈目星〉〈アイデア〉に成功すると「今の自分に似合う洋服」、どちらか1つ成功で「特に違和感のない服」、両方失敗で「個人的にはイケてると思う服」を発見する。
洋服を購入、着用するとそれぞれAPP+1、APP+0、APP-1の修正が入る。

なお、服を調達しなかった場合はみっともない服装により〈言いくるめ〉〈信用〉に-20の修正がかかる。

イベント:ナンパされる探索者

1日目および3日目の午後1か所目の調査終了時点で発生。

街中を行く探索者に軽そうな男(または女)が声をかけてくる。
探索者達のうち誰を狙っているかはランダム。
彼の誘いを断らなければ、声を掛けられた探索者はデートに付き合わされる羽目になり午後2か所目の探索に参加できなくなる。

〈言いくるめ〉で体よく断る、〈DEX*5〉で逃げる、〈こぶし〉で黙らせる等が挙げられるが、探索者の発想によっては他の手段でも良い。
なお〈APP*5〉に成功してしまうと、その美しさに魅せられたナンパ男が根性で各ロールを無効化し、しつこく言い寄ってくる。振り払うにはもう一度何らかのロールを成功させなければならない。

3日目も同じナンパ男に声を掛けられるが、こちらはナンパ男の姿が異様な怪物の姿に見えてしまう。
全員に【1/1D6】の正気度喪失の後、同じように彼の誘いを断らなければならない。
ロールに失敗すると彼にボディタッチされ、言い寄られていた探索者はそのおぞましい感触に【0/1】の正気度喪失

イベント:悪夢(1日目)

1日目の深夜に発生。
探索者全員が下記の内容で夢を見る。

INFO / EVENT

何も見えない暗闇の中、探索者は温かくてすべすべとしたものに包まれていた。
それはとろけるような心地よさで、いつまでもこの中でまどろんでいたいと思えるものだ。
しかし、何気なく腕を動かそうとしたその時――自分の腕が溶けていることに気付いてしまう。

……いや、腕だけではない。足もまた溶けきっていた。それ以外の部分もどこまで残っているのか分かない。
痛みも苦しみも一切なく、春の日向で昼寝をするような心地良さに何もかもが溶けてしまいそうだった。
甘美なまどろみに身をゆだねる中で、ふと目の前に見知らぬ少女が現れた。

「    」

少女は口を動かしたが、探索者の耳は何の音も捉えない。
探索者が言葉を発する前に少女は暗闇に消え、そして、心地よい夢も唐突に終わる。

目覚めた後、探索者達は【0/1】の正気度喪失
(これはエスが肉片を通じて外部の人間と接触を図った結果の夢である)

イベント:エスの幻影

2日目の午前の調査終了時点、かつ【10.株式会社G.R.S】が探索ポイントに追加されていない場合に発生。

探索者達は街中にどこか不自然な少女の姿を見つける。
少女は探索者達を誘うように手招きをしてから歩き出し、それを追いかけると必要な情報が得られる探索箇所へと辿り着き、少女の幻影は消える。

これに関しては単なる救済用イベントなので省略しても構わない。

イベント:幻視

2日目の調査終了時点で発生。

探索者のうち一人が軽い立ちくらみに襲われ、異様な風景を一瞬だけ幻視する。
異様な風景については後述の【イベント:異界】を参照。

★正気度喪失【0/1D3】

イベント:悪夢(2日目)

2日目の深夜に発生。
探索者全員が下記の内容で夢を見る。

INFO / EVENT

何も見えない暗闇の中、探索者は温かくてすべすべとしたものに包まれていた。
それはとろけるような心地よさで、いつまでもこの中でまどろんでいたいと思えるものだ。
昨日見た夢と同じように見えたが、ただ一つ違う点があった。

「    」

探索者の隣に、少女が立っていたのだ。
少女は昨日の夢と同じようにぱくぱくと口を動かしているが、やはり声は聞こえない。
やがて少女は諦めたように顔を伏せ、するりと暗闇に溶けて消えてしまう。

次の瞬間、
暗闇を裂くように、無数の瞳が現れた。
無数の瞳に凝視される中、探索者は体を包み込む何かにずぶずぶと沈み込んで行き――そこで目が覚める。

目覚めた後、探索者達は【1/1D3】の正気度喪失
また、この時〈アイデア〉に成功すると「少女は『たすけて』と言っていたのでは?」と感じる。

イベント:異界

3日目の午前の調査前に発生。

探索者達は強い立ちくらみに襲われ、視界はちかちかとし、耳に膜が張ったような感覚に襲われる。
幸いにも立ちくらみはすぐに収まるが、目の前には先程とは全く違う世界が広がっていた。

INFO / EVENT

目の前に広がるのは先程とは全く違う世界だった。
深紅色の空。生肉のようなてらてらとした質感の街路樹。地面は柔らかく粘性のある何か。
紫色の蔦に覆われた車が走り、空にはぎゃあぎゃあと鳴く鳥のようななにかが飛んでいた。
全ての音が歪んで聞こえ、鼻は異臭を感じ取った。

★正気度喪失【1/1D10】

これは肉片による侵食が進んだ結果の幻覚。
探索者達の五感が異常をきたしただけであり、街そのものは変わらず平和である。

また、この後出会う全てのNPCが異様な姿に見えてしまう(先述のナンパ男など)。
NPCと遭遇する度に【1/1D6】の正気度喪失が発生する。
姿も声も異様なものに感じるが、会話を交わし技能ロールを振る事は可能。

例外的に、笹島・夏野・伊集院・エスのみ普通の姿に見え、正気度喪失は発生しない。
彼らは加害者であれ被害者であれエスと関わりの深い人物(あるいは本人)であり、探索者の体内に潜むエスの肉片がその関わりの深さに反応して正常な姿に映している。

イベント:最終段階

3日目が終了し、4日目の朝を迎えた時点で【11.エンディング/ED4】に移行する。

05.ホテル

探索者達が宿泊していたホテル。
継続して宿泊する事もできるが、それなりに費用がかかる。
懐が寂しい場合はビジネスホテルに宿泊、あるいは漫画喫茶、野宿で夜を過ごすことになる。

ACTION

〈目星〉
この町の主要施設が書かれたガイドを発見。探索ポイントに【06.図書館】【07.病院】が追加される。
さらに〈アイデア〉に成功すると【08.探偵事務所】も追加。

なお〈目星〉に失敗した場合は〈アイデア〉に成功した人数分だけ探索候補地を思いつく。
ただし思いつくのは【06.図書館】【07.病院】【08.探偵事務所】の3か所まで。
その後、ホテルマンに場所を尋ねることで各地の探索が可能になる。

この処理は上記3か所が探索可能になるまで毎日行える。

NPC:ホテルマン

ホテルのロビーで受付を担当している。人畜無害な微笑みを浮かべ、落ち着いた物腰。
ゲームについては概要程度の事しか知らされておらず、どちらかと言えばゲーム後の食事の手配について詳しい。

探索者の質問には基本的に礼儀正しく正直に答える。
ただし「ゲームの主催は誰か」「ゲーム後の食事で何か不審な点があったか」は言葉を濁す。

前者は〈言いくるめ〉で「株式会社G.R.Sのプロデューサー」と答え、後者は〈信用〉で「肉はG.R.Sが用意した特別なもので、我々が仕入れたものではない」と答える。
いずれかに成功した時点で探索ポイントに【10.株式会社G.R.S】が追加される。

NPC:笹島と夏野

探索者達と同じゲームに参加し、同じ目に遭った2人。
〈聞き耳〉で2人の話し声に気づき、2人に接触を図ることが可能となる。

夏野は粗雑で単純な性格の男。性転換した今は女になっている。
笹島は気が弱くネガティブ思考の女。性転換した今は男の姿。

1日目の時点では2人とも大した情報は持たず、笹島は恐怖のあまりホテルの自室にこもり、夏野は単身で調査に乗り出すことになる(同行させても良いが、その場合は夏野からヒントが得られない)。

2日目の時点で夏野に話しかけるとG.R.Sを怪しんでいると話し、【10.株式会社G.R.S】が探索ポイントに追加される。
笹島は自室にこもり続けており、話しかけても何の情報も得られない。

3日目の時点で夏野は元の性別に戻っているが、性転換している間の事は忘れてしまっている。
書いた覚えのないメモを「探索者達に渡すべきと書いてあったから」と渡し、その場を後にする。
メモには「(探索者達の名前)に伝える事」と乱雑に書かれており、その下にそれ以上に乱雑な字で「本」とだけ書かれている。

一方で笹島はやはり自室にこもり続けている。
1日目・2日目も会いに行っていた場合のみ〈説得〉に成功する事で連れ出すことができる。
笹島は連れ出し、共にエンディングを迎えない限り虫ショゴス化して死亡する。

COLUMN

夏野の動向について
1日目に単独で調査を進め、株式会社G.R.Sを怪しむ。
2日目でさらに調査を進めた後、午後あるいは夜になって会社を訪問、【ED3】と似たような経緯で、もう一度性転換する代わりにこの怪異に関する記憶を失う。
メモは探索者達に伝える事があればと用意し、記憶を消される間際に感じた事を殴り書きしたもの。

06.図書館

市内に建つ、特に目立つところのないごく普通の図書館。

調査:本棚

司書に手伝ってもらうことで技能ロールにプラスの修正を入れても良い。

ACTION

〈図書館〉
オカルト系の週刊誌を発見し、下記の記事が目に留まる。

INFO / EVENT

オカルト系週刊誌の記事
特集「戦慄! ○○市に潜む未確認生命体!」

××県○○市。一見すると何の変哲もない中規模都市だが、その陰には我々の想像を絶する何かが潜んでいた。
「あれを見た瞬間は、本当に血の気が引きました」
そう語るのは○○市在住のAさん。都心部の企業に勤める彼女がある日の晩、路上で見たもの。それは、サッカーボールほどの大きさを誇る巨大な虫だった。甲殻類に似た羽を持ち、ぶうんと小さく羽音を立てて路地裏に消えたと言う。
それだけでも十分に恐ろしいのだが、それ以上に恐ろしかったのは……その虫が人間の肌のような色と質感を持ち、腹部には男の顔がついていた。
「驚いて悲鳴を上げてしまって……その間にあの虫は路地裏に行って、見失いました」

ここ一年で、こういった人面虫の目撃証言が○○市で相次いでいる。
○○市では一体何が起こっているのか? 人面虫とは一体何なのか?
その謎を解明するまで、筆者は今後も取材を続けるつもりである。

さらに〈目星〉に成功すると写真はこの町を映したものであること、そして出版社もこの町に存在することに気付き、探索ポイントに【09.出版社】追加。

COLUMN

未確認生命体=人間が虫ショゴスに変異した姿。

調査:パソコン

「性転換について」「株式会社G.R.Sについて」調べることができる。
1回の技能ロールで提示する情報はどちらか1つであり、どちらの結果を提示するかはPLの宣言や探索状況に応じて判断すること。

ACTION

〈図書館〉〈コンピュータ〉
性転換について調べた場合、似たような状況に陥った誰かが掲示板で相談していたログを発見する。
ネタ扱いされながらも相談者は「もう一度性転換すればいい」という言葉を信じて動くが、3日後には発狂したような文章を残して唐突に消えてしまう。
相談の結末に言いようのない不安感を覚えた探索者は【0/1】の正気度喪失

株式会社G.R.Sについて調べた場合、会社の概要の他に「自社ビルには地下研究所があり、夜な夜なそこで怪しげな実験を行っている」という噂を発見する。
あくまでも噂であるため、証拠や説得力に乏しく信憑性に欠けるものだという印象を持つだろう。

07.病院

市内の総合病院。簡単な診察を受ける事が出来る。

イベント:診察

身体検査を行い、幻覚ではなく本当に性別が変わっている事が明らかになる。
同時に胃の中に小さな影がある事も告げられる(※影=ショゴスロードの肉片)。

★正気度喪失【0/1】

NPC:患者

長期入院中の患者。
たまたま探索者達の近くにいた、あるいは看護士に話を聞こうとして断られるところを見て接触してくる。
好色家であり、美女に対しては口が軽くなる。

病院内の事情に詳しく、ここ最近の異変についても良く知っている。
〈言いくるめ〉で異変の内容(探索者達と同じ内容で診察を受ける人が増えた)を話し、〈APP*5(女性限定)〉で探索者達と同じ境遇の人を見た数日後、同じ顔をした不気味な生物の姿を見たと話す。

08.探偵事務所

探索者が望む情報を探偵に調査させる。
依頼した翌日に結果を開示。
依頼料が必要となる為、それなりの資金が必要。目安は30万円ほど。

探索ポイントというより、望む情報を開示する補助ポイントの色合いが強い。
その為どの程度情報を開示するかはKP判断。
不要であれば探偵事務所自体なかった事にしても良い。

09.出版社

オカルト誌を制作している会社。
担当記者は不在で、代わりの記者が応接スペースで対応する。

NPC:代理記者

オカルト誌担当の記者。担当記者が担当していた記事の内容も多少把握している。

・今回掲載した分で終わりではなく、追加の調査を続けていた
・数週間前に取材に行ったきり連絡がつかない

と言った事を話す。
デスクに資料がある事も話すが、〈信用〉に成功しないと連れて行ってくれない。

調査:デスク

担当記者のデスク。資料やごみが散乱しており、非常に汚い。

ACTION

〈目星〉
ICレコーダーを発見する。
中身はとある女性に対するインタビューで、
「脱出ゲームに参加した婚約者が女性になった」
「一緒に行動していたが、三日目の朝には態度が急変してしまった」
「四日目、会いに行こうと思ったら姿が見当たらなかった。近くを探し回ると婚約者と同じ顔を持った人面虫がいた」
「あれ以来、婚約者の姿は見ていない」
といった内容を話している。

ACTION

〈聞き耳〉
上司と思しき人物が
「担当記者はマメに連絡をよこす事だけが取り柄だったのに、何故一ヶ月近く無断欠勤をしているんだ」
といった内容で愚痴をこぼしている事に気付く。

ACTION

〈図書館〉
取材メモを見つける。
株式会社G.R.Sを疑っている事、正攻法は通用しないので侵入できるかどうか試すと書かれている。
探索ポイントに【10.株式会社G.R.S】追加。

COLUMN

担当記者の行動について
株式会社G.R.Sについて取材を重ね、約一ヶ月前に限界を感じて侵入に踏み切る。
……が、関係者に捕まってしまいそのまま殺害されてしまう。
死体は内々に処理され、世間的には担当記者は行方不明となっている。

10.株式会社G.R.S

遺伝子検査、研究を生業とする中堅企業。自社ビルを市内に構えている。
1日目、2日目は受付に〈言いくるめ〉をする事で応接室にて脱出ゲーム関係者と話ができる。
3日目は研究所員である伊集院が探索者を迎え、地下へ案内する。

行動:裏口からの侵入を試みる場合

裏口には鍵がかかっている。開く場合は〈鍵開け〉が必要。
さらに〈忍び歩き〉に成功する事で社内に潜入する。

潜入後、探索者達は地下へと続くエレベーターを見つける。
地下へと進んだ場合、1日目~2日目は電子ロックの扉に阻まれて進めない。
3日目は伊集院と鉢合わせ、そのまま下記の【NPC:伊集院】に移行する。

なお、〈忍び歩き〉に失敗する、あるいはエレベーターに乗らず潜入を続けると警備員に取り押さえられ、警察に引き渡される。
そのまま丸一日拘留され、釈放後は疲労により全技能に-10の補正がかかる。

NPC:関係者

脱出ゲームの関係者。
ゲームの内容、手配した事については詳しいが核心部分は知らされていない。
しかし何かを隠されている事は感づいていて、不信感を少しだけ持っている。

ACTION

〈信用〉
社内で用意した「幻の肉」をホテル側に渡すよう言われた事、何の肉かの説明もなく非常に怪しいものだった事を話し、探索者達に謝罪する。

NPC:伊集院

今回の怪異の全容を知る人物。
探索者達を地下へと案内し、沢山の機械に囲まれた部屋の中、曇りガラスの壁の前で話をする。
しかしゲームで優秀な成績を収めた事を褒める等、核心部分の話は自ら切り出さない。

探索者達が核心に迫ろうとすると、逆に以下の点について探索者の意見を聞く。

(1) 今回の異変の直接的な原因
(2) この会社を疑う根拠
(3) 我々に何を求めるのか

これらの問いに対して満足の行く答えを出すと、【イベント:提案】に移行。
出せなかった場合は伊集院が唱える得体の知れない呪文で気を失い、ホテルで目覚めた後【11.エンディング/ED4】に移行。
満足の行く答えどうかの判定はKP裁量。

イベント:提案

伊集院は「見せたいものがある」とスイッチを押す。
すると曇りガラスが一瞬にして透明になり、その向こう側にいる少女の存在があらわになる。
伊集院はガラス横の扉を開け、自身の隣に少女を立たせる。

伊集院はこの少女が「エス」であり研究の要である事、その他今回の計画の全貌(【03.背景】参照)を話す。
その間に少女が少し手を動かすと、探索者達は一様に吐き気に襲われ嘔吐してしまう。
吐いたものの中に玉虫色の肉塊があり、肉塊はひとりでに動いて少女の身体の中に取り込まれる。
★正気度喪失【1/1D4】

語り終えた伊集院は探索者達の体を蝕んでいた肉塊は回収した為、幻覚はすぐに収まると告げる。
そして真相への到達を祝い、このまま探索者達を帰してあげようと提案する。
探索者達の反応によって以下の通り分岐。

ACTION

(1) 提案を飲み、そのまま帰る
性転換したまま【11.エンディング/ED3】に移行

ACTION

(2) 提案を飲むが、元の性別に戻る事を要求
もう一度肉を食べて性別が戻った瞬間に肉を回収する必要があると返される。
その場合は再び肉を食べて吐く行為に【1D3/1D6】の正気度喪失が入るが、元の性別に戻った上で【11.エンディング/ED3】に移行

ACTION

(3) 伊集院に反抗する、逃げようとする、などそれ以外の行動
伊集院は本を取り出し、早口に内容を読み上げ始める。(※ショゴスロードの従属)
妨害を試みる場合は〈DEX*5〉。成功すると【イベント:エスの解放】に移行。
失敗 or 何もしない場合は【イベント:エスの食卓】に移行。

イベント:エスの食卓

伊集院の呪文によりエスは少女の姿からショゴスロードの姿に変わり、探索者達に襲いかかる。
ショゴスロードの姿を見た探索者達は【1D6/1D20】の正気度喪失

エスは自分に近いもの(DEX*5ロールを行った探索者)に優先して襲いかかる。
エスが〈組みつき〉に成功すると、襲われた探索者は体を拘束され【1D6】ずつ耐久を喪失する。
他の探索者はその間に逃げる事ができる。
助けようとする場合は〈エスのSTR+拘束された探索者のSIZとの抵抗表ロール〉。
成功した場合は救出に成功するが、失敗した場合は追加で他の探索者1人が拘束される。

エスが誰かを食べている場合、エレベーターまで逃げる事ができる。
逃げ出し、エレベーターが下りてくるまでの間にエスの捕食で【1D6】の耐久減少がさらに3回発生。
被捕食者の耐久が0になった時点でエスは探索者達を追う。
〈エスのDEXとの抵抗表ロール〉に失敗した探索者を新たに捕食。
残った探索者はエレベーターに乗る事で逃走に成功し、【11.エンディング/ED2】へ移行。

イベント:エスの開放

呪文が妨害され従属の効果が途切れた瞬間、エスはショゴスロードの姿に変わり、伊集院に襲いかかる。
変わる直前に「目を閉じてじっとしていて」とエスに言われるが、それに従わず目を開いていた場合はショゴスロードの姿を見て【1D6/1D20】の正気度喪失

探索者達の目の前でエスは暴れ、研究機器を壊し、地下研究所職員達を殺害して行く。
目を開いていた場合は【1/1D10】の正気度喪失

逃走を図るなど、その場から動くと〈幸運〉。
成功するとエスの攻撃がかすめるだけだが、失敗すると攻撃が直撃する。

暫く経つと辺りは静かになり、エスは少女の姿に戻る。
目を閉じていた場合はこの段階で目を開けるが、破壊と血痕に満ちた凄惨な光景に【1/1D6】の正気度喪失

エスは礼を言い、探索者に元の性別に戻るかどうかを提案する。
元の性別に戻る場合、もう一度肉を食べて性別が戻った瞬間に肉を回収する必要があるとも告げる。
提案を受ける場合は再び肉を食べて吐く行為に【1D3/1D6】の正気度喪失が入るが、元の性別に戻った上で【11.エンディング/ED1】に移行。
断ると性転換したまま【11.エンディング/ED1】に移行。

11.エンディング

ED1/エスの開放

INFO / EVENT

深い深い眠りに落ちて、次に目が覚めた時、傍にいたはずのエスは忽然と姿を消していた。
おかしな幻覚を見る事も無く、不可思議な脅威は去ったのだと理解できるだろう。

株式会社G.R.Sの地下で起きた凄惨な事件は報道されなかった。
その代わりに、ホテルを舞台にしたあの脱出ゲームを無期限中止にするという知らせが
インターネット上のニュースの片隅に載るだけだった。
評判の良い内容だっただけに惜しむ声が多く見受けられたが、真相を知るのはG.R.Sの一部の人々と探索者達だけだろう。

ゲームは終わり、不可思議な脅威の根源であるエスはどこかへ消えた。
探索者達の勇気ある行動によって、幾度となく繰り返された横暴な実験は終わりを迎えたのだ。

ED2/逃走者

INFO / EVENT

肉塊を吐き出し、自由になった足で探索者達は逃げ出した。
人影と玉虫色に怯え、夜になると適当な場所で眠りに就き……そして、探索者達は夢を見た。

何もない空間に伊集院が立っている。
彼が何事かを呟くと、探索者達の視界に霧がかかったようになった。
ただ、それだけの夢だった。

目が覚めると、探索者達はこの三日間に何があったのか思い出せなくなっていた。
何故性別が変わっているのかもわからないが、ただ一つだけ、重くのしかかる記憶があった。

――あなたは、誰かを犠牲にして日常に帰ってきたのだ。

ED3/曇る真実

INFO / EVENT

提案を飲んだ探索者達に対し、伊集院は本を取り出して何事かを呟いた。
すると視界に霧がかかったようになり、探索者の意識は途切れた。

目が覚めた時、探索者達はホテルの一室に寝かされていた。
そしてすぐに、この三日間に何があったのか思い出せなくなっている事に気付く。
記憶の喪失に戸惑いを覚えたが、やがて探索者達は日常に戻って行くだろう。

COLUMN

ED2~3における記憶喪失は伊集院が「記憶を曇らせる」呪文を唱えたため。

ED4/侵食の果て

INFO / EVENT

四日目の朝、目が覚めた時探索者達は体の異変に気付く。
小さく、そして虫のような羽が生えた異形の生物の姿になっていた。
性別の変化など些細な事に思えるほどの事態に混乱しながらも、体は勝手に動いた。

窓を開けて外へと飛び出し、人目を避けて街中を飛んで行く。
彼女に会わなければならない。その一心で探索者達は飛んだ。

人気のない路地裏に彼女と見覚えのない男の姿があった。
探索者達は彼女の足元に集い、男がぼそぼそと何かを呟く。
すると彼女の姿は玉虫色の肉塊に変わり、探索者達の小さな体をあっという間に飲み込んだ。
視界が真っ暗になり、全身の肉が潰れ、意識が途切れる寸前に聞いたのは――

「テケリ・リ! テケリ・リ!」

12.報酬

伊集院が持っていた本は、エスによる伊集院の殺害が為された時点で破壊される。
そのため本の持ち帰りは不可能。

日常への帰還

条件ED1~3到達
対象全員
内容1D10の正気度回復

エスの解放

条件ED1到達
対象全員
内容1D10の正気度回復

2度の性転換

条件2回性転換を行う
対象該当探索者
内容1D3の正気度回復

笹島の生存

条件笹島が生存する
対象全員
内容1の正気度回復

13.神話生物ステータス

「集積体S-45号(エス)」

STR-CON-POW-
DEX16APP-SIZ-
INT-EDU-正気度-
耐久29MP9db+2D6
武器
押し潰し100%dbのダメージ
こぶし95%2D3+dbのダメージ
組み付き95%毎ラウンド1D6のダメージ
装甲
火・電気によるダメージ半減
物理によるダメージは1となる
毎ラウンド2ポイントの耐久回復
呪文
なし
技能
回避(32)

10.株式会社G.R.S/イベント:エスの食卓】時は基本的に〈組み付き〉のみ行い、捕らえた探索者の耐久がゼロになるまで攻撃も回避も行わない。
ただし、捕らえた探索者を救おうとした場合のみ追加で〈組み付き〉を行う。

10.株式会社G.R.S/イベント:エスの開放】時は〈押し潰し〉〈こぶし〉のみ行う。
ただしイベント内処理の為、技能ロール、ダメージロールは行わない。
探索者が攻撃に巻き込まれた場合は、いずれかの値でダメージロールを行うこと。

14.利用規約・更新履歴

利用規約

こちらをご確認ください。

参考書籍

サンディ・ピーターセンほか(2004).『クトゥルフ神話TRPG』.株式会社KADOKAWA.
スコット・アニオロフスキーほか(2008).『クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルム』.株式会社KADOKAWA.

連絡先

製作ミナカミ
HPhttps://dara.sakura.ne.jp/
Mailminakamiryu■infoseek.jp

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更新履歴

2023/12/28「03.背景」にシナリオに含まれる要素を追加
2023/10/16他シナリオとレイアウト統一
2021/10/16著作権表記、参考書籍を記載
2020/07/12利用規約を修正
2017/12/23報酬の項にアイテムの持ち帰りについて記載
2017/08/17HTML版に差し替え
2015/05/03体裁統一、イベントテキスト追加、HP移転によりアドレス変更
2014/09/17公開