扉向こうのマリオネット(とびらむこうのまりおねっと)

このシナリオは「クトゥルフ神話TRPG(第6版)」に対応したシナリオです。

推奨人数2~4人
推奨技能目星
準推奨技能医学、歴史or考古学、図書館、跳躍、聞き耳
戦闘有無なし
所要時間約12時間(オンラインによるテキストセッション)

複数回使用する機会がある、または生還やある程度の情報取得に必要な技能を「推奨技能」、1回は使用する機会がある、またはさらなる情報を得るために必要な技能を「準推奨技能」と区分しています。

なお、所用時間はテストプレイを行った際にかかった時間です。
KPもPLも茶番好きかつ慎重なプレイスタイルのため、進行の仕方によっては所用時間が前後します。あくまで目安程度でどうぞ。

記法

シナリオの見方をご確認ください。

Copyright

本作は、「株式会社アークライト」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright (C)1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION

01.あらすじ

その日その時、探索者達は普段通りの生活を送っていた。
自宅、職場、街中――思い思いの場所で過ごしていた探索者達は、何気なく扉を開いた。

それは何の変哲も無い日常的な行動だ。
場所も目的もばらばらで、共通点があるとすれば、扉を開いたタイミングが偶然にも一致しただけのことだ。

しかし……扉をくぐった瞬間、探索者達は一様に深い藍色の光に包まれ、強烈な立ちくらみに襲われた。
幸いにも立ちくらみはすぐに治まり、ちかちかとした視界が元に戻った時、気付く――
――目の前に広がるは見覚えの無い荒れ果てた部屋である、という事に。

※これ以降はシナリオのネタバレが含まれます。ご注意ください。

02.索引

概要
01.あらすじ
02.索引
03.背景
04.1階/ロビー
05.廃屋外周
06.2階/講堂
07.1階/寝室
08.1階/台所
09.1階/子供部屋
10.地下室
11.エンディング
12.報酬
13.神話生物ステータス
14.より詳しい背景情報
15.利用規約・更新履歴

03.背景

シナリオ概要

見知らぬ廃屋に誘われた探索者が廃屋を探索するシナリオ。
廃屋の床からは定期的に触手が現れ、探索者の服を奪い取って行く。
背景情報や探索者が取るべき行動そのものに茶番要素はないが、「徐々に服を脱がされていく」という状況が茶番そのものなので、茶番が苦手なKP・PLにはプレイを推奨しない。

シナリオに含まれる要素

強制的な脱衣、下着の露出、死体描写、恐怖、未成年が酷い目に遭う、デストラップ、災害

このシナリオには上記の要素が含まれているが、事前にPLに知らせるかどうかはKPの任意。
要素としての度合いが薄いもの、行動によっては発生しないものも存在するため、PLから相談があった場合はシナリオ本文を見て適宜対応すること。
また、これはシナリオ作者の主観で要素をリストアップしたものだ。ここにはないがPLに知らせたい要素があれば自由に付け加えて良い。

背景情報

舞台は十数年前まで「ダゴンとハイドラ」の信者達が住んでいた廃屋。
現在は「藍」と名付けられた「異形の姿となり、正気を失った深きものの混血種」が住んでおり、彼女の趣味である人形遊び用の服を調達するために探索者は呼び出された。

探索者は廃屋を探索し、「藍」を殺しうる武器である【青鈍色の短剣】を入手してこれを殺害、元の場所へ戻る事が目的となる。

服剥ぎイベントについて

廃屋の1階全域で、一定時間が経過する毎に床から無数の触手が現れ探索者の服を奪おうとする。
ただしイベント発生直前に〈聞き耳〉をしていた探索者は触手の気配を感知し、回避する。

〈STR20との抵抗表ロール〉に失敗すると服を1枚剥がれる。
【青鈍色の短剣】を所持する探索者は〈STR15との抵抗表ロール〉。

全ての服を失い下着姿になると、以降【正気度減少量+1】のペナルティが課される。
また、半裸探索者が触手に絡まれるとそのおぞましい感触に【0/1】の正気度減少が発生。
この正気度減少に限り減少量+1補正は除外。

時間設定、1回のイベントで剥ぐ服の量は探索者に合わせて適宜調整。
半裸状態のペナルティがじわじわ重い為、早々に剥ぎきってしまうと不定の狂気が続出する恐れがある。

ただの服剥ぎではなく生死を賭けた探索にしたい場合は、廃屋に呼ばれた理由を「人形遊びの服集め」から「人形の素体集め」に変えればシナリオの辻褄は合う。
イベント内容をどのように改変するかはKPの好みでご自由に。

また、探索者全員が半裸状態になってから初めての服剥ぎイベント時、以下のイベントが発生する。

INFO / EVENT

再び現れた触手が探索者達の体を這いまわり、全員の服が奪われている事に気付くとするりと穴の奥へと消えて行った。
それから間もなくして、ざあざあと鳴り続けていた雨の音がふいにぴたりと止む。
窓の外の景色はノイズがかかったようにかすみ、耳を澄ませば自分達が元いた場所の雑音が聞こえた気がした。

これ以降、【04.1階/ロビー】の出口の扉を開くと【11.エンディング/ED2】へ移行する。
加えて、今後服剥ぎイベントが発生しなくなる。

04.1階/ロビー

INFO / EVENT

荒れ果て、埃を被った薄暗い部屋の中に探索者達はいた。
背後には扉があり、すぐ隣には他の探索者の姿がある。
扉の周辺にはスリッパが散乱し、部屋の中央には椅子とテーブル、
左側には二階へと続く階段と奥へと続く廊下、
右側奥には人の背丈ほどはある巨大でいびつな石像が置かれている。
そして……何より探索者達の目を引いたのは、床に無数に開けられた拳大の大きさの穴だった。

導入場所はロビー。
室内には上記イベントテキストに記されたものが設置されている。
窓の外には深い森が広がっており、窓は割る事も可能。ただしあまり意味はない。

〈聞き耳〉はどの部屋で行っても雨音だけを捉え、近くに生物の気配がない情報しか返さない。
(聞き耳の使いどころは服剥ぎイベントの回避くらい)

調査:テーブル(革表紙の本)

テーブルの上には文庫本程度の大きさの革表紙の本が置かれている。
表紙に張り付けられた金のプレートには、探索者が見た事もない奇怪な文字でタイトルが掘り込まれており、中身も同じ文字で書かれている為内容は理解できない。
(信者たちが利用していた教典。その教えは深きものの言葉で書かれている)

ACTION

〈考古学〉
金のプレートに施された細工は非常に繊細で美しいものである。
探索者はその技術がヒトのそれをはるかに超えた者であると気付いてしまう。

★正気度喪失【0/1】

ACTION

〈目星〉
最後のページに日本語で以下のように書き殴られている事に気付く。

INFO / EVENT

革表紙の本の最後のページ
騙された。
あの女もあの娘も出来損ないだ。
我々の力は父なるダゴン、母なるハイドラの為にあり、ヒロイズムに溺れた裏切り者の為ではない。
あの娘を殺しうる牙は用意した。
粛清の後、我々はこの地を離れ、潮騒に包まれた生活を送る。

調査:いびつな石像

人の背丈ほどはある巨大でいびつな石像。全体的な形はなんとなく人間に似ているが、頭部は魚に似ている。
(信者たちが信仰していたダゴンを模した像)

ACTION

〈目星〉
鱗で覆われた背中や首の左右に彫り込まれたエラ、手足の先についている水かきから、どちらかというと魚に近い何かであると気付く。
そして、その造形に得体の知れないものを感じる。

★正気度喪失【0/1】

ACTION

〈アイデア〉
窓の外を確認している or 廃屋外周に出た事がある場合のみ判定可能。
「この石像が偶像崇拝の為に作られたものだとしたら、魚という海を象徴する生物がこんな山の中で崇められているのはしっくりこない」と感じる。

調査:階段

階段の先は瓦礫で埋め尽くされていて、このままでは2階へ上る事は出来そうにない。

ACTION

〈目星〉
瓦礫を取り除けば2階へ進めるかもしれないと気付く。

ACTION

〈STR15との抵抗表ロール〉
06.2階/講堂】への移動が可能になる。

他の部屋への移動

玄関扉から【05.廃屋外周】へ、
廊下奥の3つの扉から【07.1階/寝室】【08.1階/台所】【09.1階/子供部屋】への移動が可能。
いずれも鍵はかかっておらず、簡単に開けられる。

なお、【09.1階/子供部屋】への扉に近づいて異変がないか調べた場合、部屋の中から腐臭を感じ取る。

05.廃屋外周

INFO / EVENT

ざあざあと強い雨が降っていた。
周囲は深い森に覆われており、さらにこの辺りは盆地にあたるらしく、木々に隠された空は狭い。
立っているだけで身体は濡れそぼち、少し身を動かすだけで足元に泥が跳ねた。

廃屋から逃げようとした場合、【11.エンディング/ED1】に移行する。

ACTION

周囲に対して〈目星〉
ただただ森が広がるばかりで目を引くものはない。

ACTION

廃屋に対して〈目星〉
廃屋は二階建ての建物のようで、二階部分の窓は一部が割れている。

ACTION

〈跳躍〉
二階部分の窓枠まで手が届く。この探索者のみ【06.2階/講堂】への移動が可能となる。

06.2階/講堂

INFO / EVENT

教壇といくつかの長椅子だけ置かれた広い部屋だった。
一階の荒れようから一転して、かつての姿をそのまま維持しているかのような佇まいだ。
探索者が足を踏み出すと、穴のない床板がみしりと軋んで音を立てる。

探索可能箇所は教壇と長椅子のみ。
追加報酬を出すためのキーアイテムが置かれている。
オマケ部屋に近いものである為、2階探索を無理に勧める必要はない。

調査:教壇

年代物の教壇は、造りはしっかりしていて壊れた個所は見当たらない。

ACTION

〈目星〉
教壇の上にはぽつんと木製の箱が置かれている。
箱にはシンプルながらも可愛らしい意匠が施されており、側面にはネジがひとつ取り付けられている。

箱を開くとそれが【オルゴール】であると判明する。
空いたスペースには人形と、小さく折りたたまれたメモがあり、メモには以下のように書かれている。

INFO / EVENT

オルゴールのメモ
私の身勝手な理由で産まれて、私と彼らの争いに巻き込まれて、私の弱い心で繋ぎ止められて。
愛していたつもりだった。でも、藍の人生は周りの大人に縛られ、操られていた。
私が死んでからも、藍は私の教えを守って漫然と生きるのだろう。主の命に従って動き続ける操り人形のように。

藍の事を想えば共に逝くべきなのかもしれない。
せめて苦しまないように、大好きな歌を聴きながら穏やかに眠れるように、優しい呪いを込めた。
けれども私には、このオルゴールのネジを巻く勇気はなかった。

【オルゴール】は「藍」の母親が娘を安らかに殺す為に作ったアーティファクト。
オルゴールの音色を最後までしっかりと聞いた者を眠るような死へ導く効果がある。
探索者に対しても有効である為、聴こうとする探索者には十分に警告する事。

調査:長椅子

しっかりとした造りの長椅子で、特に壊れた個所は見当たらない。

ACTION

〈歴史〉〈考古学〉
長椅子に施された意匠は深い海に対する敬意を表したものであると気付く。
そして教壇がある事から、この部屋は「深い海、あるいはそれに関係する何かを崇拝する為の部屋である」
という仮説を導き出す。

07.1階/寝室

INFO / EVENT

探索者が扉を開けると、ぱっと埃が宙に舞う。
部屋にはベッドとサイドボードが等間隔で並べられており、開け放たれたクローゼットにはハンガーだけが引っ掛けられていた。
また、やはり床には拳大の穴が点在している。
寝室のように見えるが、殆どのベッドとサイドボードは破壊されてしまっていた。

かつて信者たちが寝泊まりしていた場所。
サイドボードやクローゼットには生活の痕跡があり、ベッドの上には綴じられた紙束が置かれている。

調査:サイドボード

ベッドとベッドの間にはそれぞれサイドボードが備え付けられている。
ほとんどのサイドボードは何か大きなもので叩きつけられたかのように壊れてしまっているが、原形を保っているものもいくつか存在している。

ACTION

〈目星〉
サイドボードを探ろうとするが、鍵がかかっていて開かない。鍵開けを試みても良いし、力に訴えてみても良い。
運が良ければ近くにサイドボードの鍵があるかもしれない。

ACTION

〈鍵開け(補正+20)〉〈STR5との抵抗表ロール〉〈幸運〉
中から【マッチの箱】を見つける。中身は大半がしけっているが、辛うじて数本は使えそうだ。

調査:クローゼット

クローゼットの扉は開け放たれており、中にはハンガーが引っ掛けられている。
床には色々なものがごちゃごちゃと落ちているが、服の類は一切見当たらない。

ACTION

〈目星〉
床に落ちていたものの中に【燭台付きの蝋燭】を見つける。
蝋燭の本数はKP判断で。適当にダイスで決める程度で良い。

調査:綴じられた紙束

紙を紐で閉じただけの質素な紙束。表紙には「観察日誌」と書かれている。
多くのページはちぎり取られたり汚れたりしているが、比較的綺麗に残っているページを何枚か発見する。

INFO / EVENT

観察日誌
娘が深き者への変容を遂げた。
十歳前後での変容は珍しいが、有り得ない話ではない。
しかしこんな山奥に居るからか、娘は神に仕える者として覚醒していなかった。
海へ連れて行けばすぐに己が使命を思い出すだろう。

娘の体調が思わしくないというのは本当だろうか。
確かめようにもあの女が娘を地下深くへ閉じ込めてしまっては為す術がない。
……いや、同胞も私と同じ思いを抱いている。結託すれば、あるいは。

ACTION

〈目星〉
一番最後のページをめくろうとすると何かがこびりついていたのか、ぺりぺりと音がする。

最後のページを開くと、そのページには血痕がべったりとこびりついている。
そして、血痕に紛れて今までとは違う筆跡でこう書かれていた。

INFO / EVENT

観察日誌の最後のページ
私の邪魔をするやつは同胞であろうと許さない
私は死ぬまで娘と二人きりで幸せに暮らす
大いなる神に捧げる為に作った娘だけど
そんな事は出来ない程に娘が愛しくなってしまった
いつまでも幼く年を取らない娘は 私にとっては神よりも重い>

★正気度喪失【1/1D3】

08.1階/台所

INFO / EVENT

扉の向こう側の空気は、ねっとりとしており、かすかに黴の臭いがした。
大きな丸い机がひとつ、そしていくつもの椅子が周辺に転がっていた。
部屋の奥には台所が設けられ、台所のすぐ傍では段ボール箱の山がぐちゃぐちゃに崩れている。
床には変わらず拳大の穴があり、それに加えて食器の破片がそこここで静かに朽ちていた。

かつて信者たちが食事をしていた場所。
現在は「藍」が人形を加工する為の作業場となっている。

調査:台所

かなり古い台所のようで、カビを始めとした汚れでまともに使えそうもない。
壁には細かな字で書かれたレシピのようなものがびっしりと貼られている。

ACTION

〈図書館〉
壁に貼られたレシピの中から一つ、他とは雰囲気が異なるものを見つける。

INFO / EVENT

雰囲気が異なるレシピ
おにんぎょうのつくりかた
1. にんぎょうのもとをあらいます
2. なかみをとりだします。これはつかわないのですてましょう
3. はれたひのおそとでよくかわかします(つめものをしておくとこわれにくくなるでしょう)

と書かれている。他のレシピは家庭料理であるのに、これだけは「おにんぎょう」の作り方のようだ。

ACTION

レシピに対して〈医学〉〈知識〉
「これはミイラの製法である」という事に気付き「おにんぎょう」の正体にも察しが付いてしまう。

★正気度喪失【0/1】

調査:段ボール箱の山

ぐちゃぐちゃに崩れた段ボールからは中身がこぼれ出ている。

ACTION

〈目星〉
段ボール箱の中身をよく観察してみると、それは腐りきった内臓だった。
それが段ボール箱の中に無造作に、いくつもいくつも、詰め込まれている。

★正気度喪失【1/1D3】

ACTION

段ボール箱の中身に対して〈医学〉
「中に詰め込まれている内臓は全て人間のものである。おそらく全ての内臓が取り出され、ここに無造作に詰め込まれている」という事に気付く。
さらに内臓の腐り具合にはムラがあり、長期間に渡って何度も「それ」は行われてきたのだという事にも気付く。

調査:丸い机(青鈍色の短剣)

古くて重そうな木製の丸い机。
何だかよく分からない染みがまばらに付いており、机の真ん中には青鈍色の短剣が突き刺さっている。

ACTION

〈目星〉
とても古い短剣のようだ。切れ味は鈍そうだが、それなりの殺傷力はあるのだろう。

ACTION

〈歴史〉〈考古学〉
百年以上前に作られた短剣であり、施された意匠からして深い海に対する敬意を表したものである、と判明する。

青鈍色の短剣に触れる

短剣に触れると以下のイベントが発生する。

INFO / EVENT

青鈍色の短剣に触れた瞬間、○○の視界は暗闇に覆われ、他の探索者の声も雨の音もぶつりと遮断された。
その代わりに聞こえるのはぞわぞわと足元から忍び寄るような、不安定な旋律の歌声だ。

……ふと気付けば、深い藍色の光がほのかに辺りを照らし、ロビーの石像に似た生物が円を描くように○○を取り囲んでいた。
歌声の主は彼らであり、歌の内容は分からないが、決して歓迎されていない事だけは理解できた。
○○の目の前に見上げるほどに巨大な2体の生物が姿を現した。
彼らの外見もあの石像に酷似しており、体つきはそれぞれ男性と女性のそれであった。

女性体の方がどこからともなく青鈍色の短剣を取り出し、それを受け取った男性体が○○に向けてナイフを振り下ろした。
短剣は○○の脳髄を貫き、喉を裂き、はらわたは焼けつくような痛みに襲われる。
心臓が早鐘を打つ。血が逆流する音が聞こえる。目から、耳から、鼻から、口から、どろりとした液体が溢れ出す。
指先から骨と肉がぼたぼたと崩れ落ち、真っ赤な肉は一瞬でどす黒い色へと変わり、強い腐臭が辺りを覆う。

呪歌はより一層大きく響き――そしてそこで、○○の意識は現実へ帰還した。

★正気度喪失【1/1D10】

以降【青鈍色の短剣】を持ち運ぶことが出来るようになるが、
上記イベントを発動していない探索者が短剣に触れた場合、同様の白昼夢を見て正気度喪失が発生する。
その為、誰が短剣を持っているのかは注意する事。

09.1階/子供部屋

INFO / EVENT

扉を開けた探索者を襲ったのは、つんと染みるような腐臭だった。
部屋にはベッドと机、そして本棚があり、床に拳大の穴と斑模様の布切れが点在している。
褪せた桃色で彩られた壁や天井には、何かが打ち付けられたような跡が赤黒い染みとなって残っていた。
家具の大きさやデザインをぱっと見た限り、ここはどうやら子供……それも女児の部屋のようだ。

「藍」の為の部屋。
反旗を翻した信者達が「藍」の母の手によって惨殺された場所であり、現在もその痕跡が残っている。

調査:斑模様の布きれ

床には小さな布切れが散らかっている。

ACTION

〈目星〉
布きれの縁にはとても小さなフリルがあしらわれていており、探索者は「この布きれは、元々は人形の洋服だったのではないか」と感じる。

ACTION

〈医学〉
斑模様をよく検分してみると、模様の正体はかなり古い血痕である、という事が分かる。

調査:机

子供向けの学習机。机の上には写真立てぐらいしか目につくものがない。
写真立てに収められていたのは、二十代の女性と十歳前後の少女が写った白黒の写真だった。

ACTION

〈目星〉
写真立ての裏側を見ると、「藍 十歳の記念に」と小さく書きこまれていた。

ACTION

机の引き出しを開ける
机の引き出しを開けると、ぎっしりと詰め込まれた人形の顔が探索者の方を向いている光景を目の当たりにする。
どの人形も赤黒い染みがまばらに付着しており、血まみれの人形の山の様相を呈している。

★正気度喪失【1/1D3】

調査:壁や天井

壁や天井ある赤黒い染みは他の部屋にはないもので、何かが打ちつけられてできたものだと言う事は軽く見るだけで分かった。

ACTION

〈目星〉
その近くに黒い毛がまばらに落ちている事に気付く。

ACTION

黒い毛に対して〈医学〉〈アイデア〉
染みの正体は血痕である事、黒い毛は打ちつけられた被害者のものではないかと気付く。
そして、それがこの部屋に無数にあると言う事実が示す内容にも気付くだろう。

★正気度喪失【0/1】

調査:本棚

本棚には児童書や手芸の本が収められているが、冊数は少なくあちこちに隙間があった。

ACTION

〈目星〉
見た目の割に本棚はとても軽そうだ。少し力を込めて押せば簡単に動くだろう。
本棚を押すとその後ろから新たな扉が姿を現し、調査が可能になる。

ACTION

〈図書館〉
本棚の下の方には、アルバムと思しき本がある。
とある女児のアルバムのようで、どの写真でも彼女は人形を抱いており、着せ替え遊びをしている写真もあった。
しかし10歳になるかならないかという辺りで唐突に写真は無くなり、最後のページには小さくこう書かれている

INFO / EVENT

アルバムの最後のページ
あいつらにかけられた呪いは何十年経った今でも解けない。
娘を健康な姿に戻してやりたいけど出来ない。
何の為に多くの魔術を覚えてきたのだろう。
あんな姿のまま、娘を一人残す事がただただ、口惜しい。

調査:扉

本棚を動かす事で発見する。
他の部屋の扉と何ら変わりのない、至って普通の扉。

ACTION

〈目星〉
鍵付きの扉ではなく、特に変わった仕掛けも見当たらない。

ACTION

〈聞き耳〉
扉の向こう側でずるずると何かが這いずるような音がする。
その音から判断するに、いくつもの触手が扉を押さえているのだろう。

扉は押しても引いても開かない。STRによる抵抗表ロールも存在しない。
【青鈍色の短剣】を持つ探索者が扉に近づいた時のみ、
扉を押さえている触手が遠ざかり扉が開いて【10.地下室】への移動が可能となる。

10.地下室

INFO / EVENT

長い長い階段を下りて辿り着いたのは、石造りの地下室だった。
入り口の辺りは階段から差し込むわずかな光があるが、奥の方は深い闇に包まれている。
地下室は先程の部屋とは比べ物にならないほどの腐臭と、
肌の隅々までまとわりつくような粘り気のある空気で満ちていた。

「藍」が潜む部屋。
暗く、明かりを付けるまでは目を使う技能は一切使用できない。

行動:明かりを灯す

INFO / EVENT

○○が地下室に明かりを灯すと、奥に居たものがぐちゃりと粘性のある音を立てた。

……それは、子供の背丈ほどの大きさの、青白い肉塊であった。
何段にも積み重なったぶよぶよの肉は光に反射してぬらぬらとした光沢を放っている。
生物としてでたらめな位置についた複数の眼球はそれぞれが好き勝手にぐるぐると視線を巡らせていた。
ぎざぎざの歯が何重にも生えた口の中は真っ黒で、何かを呟くように口を動かしていたが、探索者達の耳には届かなかった。
体のそこここから生える触手は一本一本が非常に長く、ずるずると緩やかに動いていた。

★正気度喪失【1/1D10】

行動:明かりを灯さず奥へ進む

INFO / EVENT

深い闇の中、探索者達は慎重に歩みを進める。
腐臭はより一層強くなり、探索者の足に何かが触れた――瞬間、壁に設けられた燭台に一斉に青白い火が灯され、
探索者達の目の前に腐臭の主が現れた。

……それは、子供の背丈ほどの大きさの、青白い肉塊であった。
何段にも積み重なったぶよぶよの肉は光に反射してぬらぬらとした光沢を放っている。
生物としてでたらめな位置についた複数の眼球はそれぞれが好き勝手にぐるぐると視線を巡らせていた。
ぎざぎざの歯が何重にも生えた口の中は真っ黒で、何かを呟くように口を動かしていたが、探索者達の耳には届かなかった。
体のそこここから生える触手は一本一本が非常に長く、ずるずると緩やかに動いていた。

★正気度喪失【1D3/1D10】

正気度喪失量の違いは「藍」を間近で見るかどうかの違い。
いずれかの手段で部屋に明かりが灯されたのち、部屋と「藍」の調査が可能となる。

調査:部屋

広い部屋だが家具や調度品の類はなく、殺風景な印象がある部屋。

ACTION

〈目星〉
部屋の奥には茶色い物体が山のように積み上がっている。さらによく見るかどうかはPLの任意。

よく見てみる場合、探索者はその物体が沢山の、数え切れないほどのミイラの山であると理解する。
どのミイラもぼろぼろにされており、冒涜的な光景が広がっている。

★正気度喪失【1/1D3】

調査:藍

青白い肉塊は探索者達に対して特に何の反応も見せない。
探索者達の存在に気付いているのかどうかすら分からないが、とりあえず敵意は無いようだ。

ACTION

〈目星〉
「藍」ががぼろきれを纏った人型のミイラを抱えている事に気付く。
また、肉塊の後ろの方には探索者達が着ていた服が無造作に積まれていた。

なお、服を取り返そうとすると触手が探索者に絡みついて押し返す。
服を取る事は出来ず、肌に直接触れる触手のおぞましい感触に襲われるだけだ。

★正気度喪失【0/1】

ACTION

人型のミイラに対して〈アイデア〉
「ミイラを人形と見立てて着せ替え遊びを行っているのではないか」という考えが浮かぶ。

ACTION

〈聞き耳〉
何かを歌うように呟いているが、到底理解できる言語ではなかった。

最終決断:普通に攻撃

自前の武器で攻撃する場合、戦闘に移るが青白い肉塊は無抵抗で何も行動を起こさない。
青白い肉塊の耐久力は14。これが0になった時点で下記のイベントが発生し「藍」は死亡する。

INFO / EVENT

探索者達の攻撃を受け、青白い肉塊は耳をつんざくような悲鳴を上げた。
傷口からどす黒い膿のようなものを流しながら、四方八方に触手を暴れさせる。

しかしそれもほんの少しの間の事。
やがて悲鳴は止み、体中から黒い膿を流しぴくぴくと機械的に痙攣をしていたが、

「―― ―  ― 」

探索者達には理解できない言語で何かを呟いたきり、動かなくなった。
……言葉の意味は分からないが、その声音は、救いを求める幼子のようであった。

★正気度喪失【1/1D6】

最終決断:青鈍色の短剣を刺す

INFO / EVENT

○○が青鈍色の短剣を突き刺すと、一瞬の静寂の後、青白い肉塊は耳をつんざくような悲鳴を上げた。
傷口からどす黒い膿のようなものを流しながら、四方八方に触手を暴れさせる。

青白い肉塊は見る見るうちに生気を失い、触手の先から黒に染まっていく。
やがて悲鳴は止み、どす黒い肉塊と化しつつもぴくぴくと機械的に痙攣をしていたが、

「―― ―  ― 」

探索者達には理解できない言語で何かを呟いたきり、動かなくなった。
……言葉の意味は分からないが、その声音は、救いを求める幼子のようであった。

★正気度喪失【1/1D3】

最終決断:オルゴールの音を聞かせる

INFO / EVENT

○○はオルゴールのネジを巻き、蓋を開けて青白い肉塊の傍に置いた。
場違いなほどに透き通ったオルゴールの音色が辺りに響き、青白い肉塊は動きを止める。
全ての目がオルゴールを見つめ、触手を動かしてオルゴールを持ち上げ、自らの身にぴったりと、抱き寄せるように密着させた。

青白い肉塊の触手に阻まれてオルゴールの音は小さくなる。
そして、濁りきった声でオルゴールの音色に合わせて何事かをぶつぶつと呟く。
……それは、探索者達の耳には彼女が歌っているように聞こえた。

歌声は徐々に弱まり、目も、触手も、口も、全てが動きを遅くして行き……やがて、彼女は動かなくなった。

「藍」死亡後イベント

INFO / EVENT

そして、地下室が深い藍色の光に強く照らされる。
その光は探索者達がこの屋敷に来る時に見たものと酷似しており、光源は背後――地下室に入る時に通った扉の向こうから漏れ出ていた。

この時点で「藍」の後ろに置かれた服を回収する事が出来る。
ただしボタンは千切れて粘液でぬるぬるべとべとという悲惨な状態。

扉を開けると【11.エンディング/ED3】に移行する。
なお【青鈍色の短剣】を持ち帰ることはできない。
例え手に持ったまま扉を開けたとしても、気づいた時には手元から消えているだろう。

11.エンディング

ED1/廃屋から外に出て逃げ出す

INFO / EVENT

探索者達は屋敷を抜け出して山道を登り始めた。
雨でぬかるんだ道は非常に歩きづらく、思うように歩が進まない。
そもそもここはどこなのだろうか――? そう思い始めた探索者達の耳が、かすかな地鳴りの音を捉えた。

……異変に気付いた時には手遅れだった。
探索者達が進もうとしていた先から緩んだ土砂が、それに巻き込まれた木々が津波のように押し寄せる。
逃げようとする前に、探索者達は全員、泥と木々の海に飲みこまれた。

――翌日。
とある地方で土砂崩れが発生、身元不明の死者が複数名発見された、というニュースが全国を流れた。
土砂崩れに巻き込まれて倒壊した建物の住民ではないか、という憶測に基づき捜査が行われたが……
所詮はよくある自然の不幸。彼らの身元が判明する前に、世間はこのニュースを忘れてしまうだろう。

(探索者全員ロスト)

ED2/服を全て剥がれ、元の世界へ帰還

INFO / EVENT

探索者達は扉を開けて一歩踏み出す。
その瞬間、深い藍色の光が視界を覆い――

ふと気付いた時には、探索者達はそれぞれの自室の扉の前に、立っていた。
辺りを見回してもあの屋敷は影も形も見当たらない。
……そう。探索者達は日常へ戻ってきたのだ。

あの廃屋は何だったのか? どこに存在しているのか? あの触手は一体?
様々な疑問が駆け巡るが、それを確かめる術は探索者達にはない。
ただ一点、確かなものがあるとすれば……廃屋での出来事は全て現実であった事、それだけは消えた服がはっきりと物語っていた。

おめでとう。探索者達は廃屋の怪異から逃れ、日常生活へ戻ってきた。

ED3/怪異の根源を討伐し、元の世界へ帰還

INFO / EVENT

探索者達は扉を開けて一歩踏み出す。
その瞬間、深い藍色の光が視界を覆い――

ふと気付いた時には、探索者達はそれぞれの自室の扉の前に、立っていた。
辺りを見回してもあの屋敷は影も形も見当たらない。
……そう。探索者達は日常へ戻ってきたのだ。

あの肉塊の死を見届け、帰還した探索者達は「もう二度とあの廃屋に誰かが呼ばれる事は無い」という事だけは理解していた。
少ない情報を元に廃屋での出来事をより詳しく調べるのも、忘れ去って日常に戻るのも、探索者達の自由だ。

おめでとう。探索者達は廃屋に住まう呪われた子を解放し、日常生活へ戻ってきた。

12.報酬

【オルゴール】および【青鈍色の短剣】を持ち帰ることはできない。
エンディングを迎えた時点で、これらのアイテムは探索者の手元から失われる。

奇妙な廃屋から現実への帰還

条件ED2またはED3到達
対象全員
内容1D10の正気度回復

青白い肉塊を殺害

条件ED3到達
対象全員
内容1D6の正気度回復

青白い肉塊を葬送

条件オルゴールで青白い肉塊を殺害する
対象全員
内容1D3の正気度回復

一度も半裸になる事なく帰還

条件一度も半裸状態にならずにED3到達
対象該当探索者
内容1D3の正気度回復

13.神話生物ステータス

「藍(深きものの混血種)」

STR20CON16POW25
DEX1APP1SIZ12
INT13EDU1正気度0
耐久14MP25db+1D4
武器
触手40%1D6+dbのダメージ
組み付き35%通常の組み付きと同様
装甲
なし
呪文
窓の創造(ルールブックP284)
技能
なし

シナリオ上は戦わないのでステータスに意味はないが、凶悪改変する際の参考用に。
呪いの効果で「深きものの混血種」からかけ離れた姿にされているため、ステータスや技は「深きものの混血種」関連でこだわる必要はない。

14.より詳しい背景情報

今から数十年前の日本。
とある海辺の町にダゴンとハイドラと呼ばれる神格を崇拝する教徒達が住んでいました。
ある時、彼らの長である女魔術師はダゴンとハイドラの眷属である「深きもの」と子を成しました。
生まれた「深きものの混血種」はいずれ「深きもの」に変容し、それをダゴンとハイドラに献上するためです。

しかし彼女は生まれた娘に対して独占欲に似た愛情を抱いてしまい、献上に強い抵抗を覚えます。
少しでも海から離れるために山奥に住処を用意し、教徒を言いくるめて移り住みました。
(この時点では彼女の真意は教徒に知らされていません)

「藍」と名付けられた娘は、人形遊びが好きな大人しい娘に育ちます。
しかし10歳を迎える頃、娘の身体は「深きもの」へ変容してしまいました。
娘をダゴンとハイドラに献上しようとする教徒とそれを拒否する女魔術師との間で対立が生じ、彼女の真意も教徒が知るところとなりました。

教徒達はダゴンとハイドラに祈りを捧げ、刺した者に苦痛にまみれた死を与えるアーティファクト(青鈍色の短剣)を作成し、母娘に制裁を加えようとしました。
しかしいち早くそれに気付いた母の手により教徒達は惨殺されました。
そして死の間際の教徒達が生命を絞り尽くして娘に呪いをかけ、娘の身体は「深きもの」からあの青白い肉塊へ変容し、娘は完全に発狂してしまいました。

力が強くなりすぎて今までの人形では遊べなくなってしまった娘を見た母は、教徒達の遺骸をミイラに加工し新たな「おにんぎょう」としました。
母は娘にミイラの作り方、素材の呼び方、上手な力の使い方を辛抱強く教えました。

やがて月日は経ち、病か怪我かあるいはそれ以外の要因か、母はこの世を去りました。
残された娘は狂った頭のままで母の教えに従い、服が破れてしまえば誰かを呼び寄せて服を剥ぎ、人形が壊れていれば呼び寄せた誰かを新たな人形としました。

そんな生活が十数年続いたある日、服を調達する為に探索者達が呼び出され、今に至ります。

15.利用規約・更新履歴

利用規約

こちらをご確認ください。

参考書籍

サンディ・ピーターセンほか(2004).『クトゥルフ神話TRPG』.株式会社KADOKAWA.
スコット・アニオロフスキーほか(2008).『クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルム』.株式会社KADOKAWA.

連絡先

製作ミナカミ
HPhttps://dara.sakura.ne.jp/
Mailminakamiryu■infoseek.jp

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更新履歴

2023/12/28「03.背景」にシナリオに含まれる要素を追加
2023/10/16他シナリオとレイアウト統一
2021/10/16著作権表記、参考書籍を記載
2020/07/12利用規約を修正
2017/12/23報酬の項にアイテムの持ち帰りについて記載
2017/08/17HTML版に差し替え
2015/09/28報酬が多すぎたので修正
2015/05/03体裁統一、HP移転によりアドレス変更
2014/05/06テキスト版に差し替え
2014/03/21Excel版公開