人生画廊(じんせいがろう)
このシナリオは「クトゥルフ神話TRPG(第6版)」に対応したシナリオです。
推奨人数 | 1~2人 |
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推奨技能 | 目星 |
準推奨技能 | 芸術(絵画) |
戦闘有無 | なし |
所要時間 | 約4~6時間(オンラインによるテキストセッション) |
複数回使用する機会がある、または生還やある程度の情報取得に必要な技能を「推奨技能」、1回は使用する機会がある、またはさらなる情報を得るために必要な技能を「準推奨技能」と区分しています。
……が、このシナリオに関しては推奨技能がなくても生還は簡単にできます。
なお、所用時間はテストプレイを行った際にかかった時間です。
KPもPLも茶番好きかつ慎重なプレイスタイルのため、進行の仕方によっては所用時間が前後します。あくまで目安程度でどうぞ。
記法
シナリオの見方をご確認ください。
Copyright
本作は、「株式会社アークライト」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright (C)1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION
01.あらすじ
ある日の休日、探索者は美術館を訪れていた。
様々な作品を見て回った探索者は、順路を少し逸れた所にも展示がある事に気付く。
そこへ足を踏み入れた瞬間、唐突に停電が起こり視界は真っ暗になった。
間もなく照明は復旧したが、探索者の目の前に広がっていたのは――長い長い画廊だった。
02.索引
概要
01.あらすじ
02.索引
03.背景
04.表層
05.中層
06.深層
07.逃走劇
08.エンディング
09.報酬
10.利用規約・更新履歴
03.背景
シナリオ概要
見知らぬ画廊を探索しながら進んで行くシナリオ。
基本的に一本道で、技能ロールに全て失敗したとしても生還可能。
ただしPOWが低いとロストする可能性があるため注意すること。
また、探索者はシナリオの終盤で「最も大切に思っている人」の記憶を喪失する。
終盤の出目によっては生還後もある程度の期間は記憶を取り戻すことができない。
そのため、KPはセッション前にPLに「探索者が大切に思っている人は誰か」を尋ねておくことを推奨する。
(見知った探索者ならKPの独断で決定しても良い)
恐怖、人形、一時的な記憶喪失、一時的なステータス変動、成り代わり
このシナリオには上記の要素が含まれているが、事前にPLに知らせるかどうかはKPの任意。
要素としての度合いが薄いもの、行動によっては発生しないものも存在するため、PLから相談があった場合はシナリオ本文を見て適宜対応すること。
また、これはシナリオ作者の主観で要素をリストアップしたものだ。ここにはないがPLに知らせたい要素があれば自由に付け加えて良い。
背景情報
舞台となる画廊は「ニャルラトテップ」が仕掛けた罠。
その目的は罠にかかった者の魂を絵画に変え、ついでに抜け殻になった肉体を操り人形とする事。
そして、魂のこもった絵画――見る人の心を惹き付ける名画を利用して世界中に混沌の芽を植え付けようと画策していた。
罠にかかった探索者は、気を失っている間に魂の大半を絵画に変えられてしまう。
しかし名画を完成させるための最後の1ピース――自我だけは、絵画になる事を探索者自身が選ばなければならなかった。
絵画を完成させる為に人間に化けて誘い込むニャルラトテップ。
ニャルラトテップの罠から逃れ、無事に生還する事が本セッションでの目的となる。
04.表層
探索者は長い長い通路に立っていた。
三人が並んで歩ける程度の幅で、左右の壁には等間隔で絵が飾られている。
探索者の傍にはパンフレットが詰め込まれた小さなラックが設置されており、見知らぬ青年がそのパンフレットを手に取っていた。
導入場所は細長い通路。
左右の壁には等間隔で絵が飾られている他、探索者達の傍にはパンフレットが詰め込まれた小さなラックが設置されている。
また、NPCがラックの傍にいる。
〈辺りを見回す〉
辺りを見回すと通路は前後にどこまでも続いている事が分かる。
そして「いくら長い通路とはいえ、ここから出口が見えないのはおかしい」と気付いてしまう。
★正気度喪失【0/1】
調査:絵画
特に印象に残らないような小さな抽象画が並んでいる。
(これは魂の中でも曖昧で視覚化しにくい部分を絵画化させたもの)
〈目星〉
額縁の下には絵画のタイトルと作者名を記す為の銅板があるが、タイトル部分は空白で作者名には無数の引っかき傷が付いていて読み取ることが出来ない。
〈芸術(絵画)〉
これらの絵画は有名な画家のものではない。
芸術的価値はないが、じっと観察していると、何故かとても馴染みがある絵のように思える。
調査:パンフレット
薄く細長い簡単なパンフレット。表紙は先程まで探索者がいた美術館のものと全く同じで、「身近に感じられる芸術の息吹 ○○美術館」と書かれている。
中を見ると、パンフレットにはとある芸術家の個展について色々と書かれている。
しかし、肝心の芸術家の名前はインクが滲んでいて読めない。
なお、他のパンフレットを確認した場合、まるでコピーされたかのように同じ形でインクが滲んでいるのを発見する。
★正気度喪失【0/1】
〈目星〉
パンフレットの説明を読み込み、書かれている内容を以下のように理解する。
パンフレットの説明
①この芸術家の名前・年齢・性別・出身地は不明であり、写真や似顔絵も載っていない
②抽象画だけでなく、風景画や人物画も手掛けた多作な人である
③「魂が込められた絵画」こそ至高の価値を持ち、多くの人を惹き付ける真の芸術品であると信じている
行動:奥に進む、あるいは戻ろうとする
【05.中層】へ移行。
戻ろうとしていた場合は、戻れなくなっている事に気付き【0/1】の正気度喪失。
NPCについて
名前は「ペトラ・サンリィ」と名乗る青年。
陽気で多弁。探索者に対して興味津々でプロフィールや趣味など折に触れて聞こうとする。
調査はしないが折に触れて画廊の奥へと誘導する。
その正体はニャルラトテップが人間に化けた姿。
(ペトラ・サンリィ(Petora Thanly)はニャルラトテップ(Nyarlathotep)のアナグラム)
〈心理学〉
ペトラは基本的にこの状況を楽しみ、探索者に強い興味を持っている。
心理学で開示されるのもそう言った表面上の事のみ。
(ただし、【06.深層】辺りでは本性を垣間見て正気度喪失を入れても良いかもしれない)
〈攻撃を加える〉
以下のイベントが発生。
画廊の壁が、壁に掛けられた絵が、チョコレートのように溶けて行く。壁の向こう側には深い闇が広がっている。
ペトラ……いや、ペトラだったものの体格は大きく歪み、その姿を膨らませて行った。
顔があるべき場所から伸びる真紅の触手が、探索者を嘲笑うように揺れていた。
それが両の腕を軽く動かすと、指先から伸びる鉤爪が擦れてぎいぎいと錆びた金属のような音を立てる。
膨れ上がった巨体を支える三本の脚は、探索者を虫けらのように踏み潰してしまいそうだ。
探索者達の目の前に現れたおぞましき怪物に、ペトラの面影は欠片も残されていない。
……しかし、探索者は理解した。理解してしまった。
これこそが、彼の本性だったのだ。
★正気度喪失【1D10/1D100】
正気度喪失後、探索者達が全滅する、または血塗られた舌の耐久力が0になるまで戦闘を行う。
「血塗られた舌(月に吠えるもの)」
ステータスおよび戦闘時の行動は「マレウス・モンストロルム(P.213)」に準拠する。
血塗られた舌に敗れた場合は【08.エンディング/ED3】、血塗られた舌に勝利した場合は【08.エンディング/ED4】に移行。
05.中層
通路を進むにつれて、照明は徐々に薄暗くなって行く。
壁に飾られた絵画は一回り大きくなり、そして探索者はパンフレットが詰め込まれたラックを発見した。
辺りが少し薄暗くなり、壁に飾られている絵が一回り大きくなった以外は【04.表層】と変わりはない。
調査:絵画
両手で抱えられそうなほどの大きさの風景画が並んでいる。
(探索者の場所に関する記憶を絵画化させたもの)
〈目星〉
以下のイベントが発生。
その風景画をじっくりと観察した○○は、描かれているのは自身がよく訪ねていた街並みだと気付く。
いや、この絵だけではない。周りに飾られている絵の半数近くは○○がよく知る風景を描いていた。
その事実に気づいた瞬間、○○の視界は白に染まる。
――視界が元に戻った時、○○は見覚えのある街並みに立っていた。
車が絶え間なく行き交う音。道行く人々の雑談。何の変哲もない街の喧騒……のはずだった。
○○の耳はあらゆる音が歪み、消えて行く様を、
○○の目は街の景色が色あせ、ぼろぼろと崩れていく様を捉えた。
……いや、この街並みだけではない。
自宅。公園。校舎。スーパー。病院。馴染みの店。
○○が今まで見てきた風景の全てが崩れ去り、○○は何もない闇の中に取り残された。
ふと気が付くと、○○は先程と変わらず風景画の前に立っていた。
画廊に並ぶ風景画は全て「初めて見る風景」が描かれていた。
程なくして○○は気付くだろう。
……この画廊を訪ねる前、生まれてから今まで過ごしてきたあらゆる場所の記憶が失われている事に。
★正気度喪失【1/1D6】
〈芸術(絵画)〉
これらの絵画も有名な画家のものではない。
見たものをそのまま描いたかのような確かな技術は感じられるが、感情に迫るものはない「ただの絵」のようだ。
調査:パンフレット
薄く細長い簡単なパンフレット。表紙は先程まで探索者がいた美術館のものと全く同じだが、そこに書かれているのは「に美術館感じ息吹○○芸術 られる身近の」と変化している。
〈目星〉
パンフレットに書かれている言葉の一つ一つを注視してみると、いくつかの文字が太字で記されている。
太字の部分だけ縦に読んでみると、ある文章が浮かび上がる。
パンフレットに隠された文章
魂の最も美しい部分は自我である。
魂が込められた魔性の絵画とは、
その絵画に強い思い入れを持つ者の自我が込められた絵画である。
イベント:人形
奥へと進む、あるいは戻ろうとすると発生。
進行方向から探索者の人数+ペトラの分だけ木製の小さなデッサン人形が歩いてくる。
人形は探索者の身体をよじ登り、肩に座ろうとする。
この人形はニャルラトテップが作り出した罠の一種。
近くにいる者の記憶を吸収し、その人、あるいは近親者に似た姿に化ける。
記憶を削り、正常な判断力を失わせる事、肖像画に記憶を受け渡す事が主な目的である。
ここで出現する人形は探索者の自我を吸収するためのもの。
その為、生まれや目的は罠であっても思考は探索者に近い。善玉。
人形を攻撃する、あるいは振り払って落とすと壊れてしまい、傷口から流れだした血が小さな水たまりを作り、同時に傷口と同じ個所に鈍い痛みを感じる。
★正気度喪失【1/1D2】
このイベント以降、奥へと進む(あるいは戻ろうとする)と【06.深層】へ移る。
06.深層
通路を進むにつれて、照明はさらに薄暗くなって行く。
探索者の背丈ほどはある巨大な絵画が並び、絵画の間には大理石の小さな台。
そして、パンフレットが詰め込まれたラックを発見した。
辺りがさらに薄暗くなり、壁に飾られている絵は探索者の背丈ほどはある巨大なものに変化している。
絵画の間には大理石の小さな台があり、パンフレットが詰め込まれたラックも変わらず存在する。
調査:絵画
探索者が近付くと、顔がぼやけた肖像画のように見えるが、次第に見覚えのある人物の顔に見えてくる。
タイトルには「(大切な人の名前)」が刻まれている。
その人はとても親しい人のはずだが、この肖像画を見た瞬間から、彼(彼女)がどんな人物であったか、どう思っていたか、のような関係に当たるか。
その人に対する記憶が急速に薄れて行く。
今の探索者にとって、その人は初対面の人に過ぎない存在に変わってしまう。
しかし、何か大切なものを失ってしまった感覚は残っている。
★正気度喪失【1/1D6】
これ以降探索者は親しい人に関する記憶を喪失する。
他の肖像画を見た時も、そこに描かれていた人物の記憶を喪失してしまう。
〈目星〉
作者の部分には「(探索者の名前)」が刻まれている。
〈芸術(絵画)〉
描かれた人物の人柄がにじみ出てくるような、とても出来のいい絵画だと感じる。
「描いた人の想いがそのまま絵になった」と言っても過言ではない。
調査:パンフレット
薄く細長い簡単なパンフレット。表紙は先程まで探索者がいた美術館のものと全く同じだが、そこに書かれているのは文字化けしたような、到底理解できない文字列である。
〈目星〉
読める漢字だけを追ってみると、探索者が歩んできた人生を簡略に、しかし的確に記されている事に気付く。
自身しか知り得ない情報が書かれている。有り得ない現象が起きている。
★正気度喪失【1/1D3】
調査:大理石の台
大理石の小さな台の上にはそれぞれ一体のデッサン人形が置かれている。
【05.中層】で出会った人形と同じに見えるが、こちらは肖像画の人物と同じ格好をしている。
〈目星〉
同じ格好をしているにしても、人形にしてはいやに生々しい存在感を放っている事、他の台の上にも同じように人形があり、それぞれ異なる服装をしている事に気付く。
イベント:顔のない肖像画
奥へと進むと発生。
探索者は行き止まりに辿り着く。
そこには二枚の大きな肖像画があり、探索者と同じ服装をした、顔のない肖像画とすぐに気付く。
〈目星〉
とても大きな、非常によく描かれた肖像画。
顔こそ真っ黒に塗り潰されているが、それ以外は現在の探索者とそっくり同じ格好で描かれている。
また、額縁の下に添えられた金属板には「探索者の名前」だけが刻まれている。
〈芸術(絵画)〉
顔が塗り潰されている事で全てが台無しになっている。
もしもこれが完成すれば、とてつもない価値を持つ名画になるだろう、と感じる。
〈肖像画に触れる、長時間見つめる〉
触れた瞬間、探索者の眼には肖像画しか映らなくなり、身体は縫いつけられたかのように動かなくなる。
しかしそれは不快感や恐怖感を煽るものではなく、むしろ、ずっとこうしていたいと思えるような、多幸感に満ちたものである。
触り続けると【08.エンディング/ED1】へ移行。
手を放そうとすると〈POW*5〉ロール。
ロール成功で肖像画から手を引きはがし、【イベント:意思の選択】へ移行。
失敗した場合はあと2回〈POW*5〉に挑戦できる。成功した時点で【イベント:意思の選択】へ。
全て失敗した場合は【08.エンディング/ED1】へ。
〈肖像画から離れる〉
踵を返そうとする足がぴたりと止まってしまい、動く事が出来なくなる。
以降、【イベント:意思の選択】へ。
イベント:意思の選択
肖像画から少し距離を取った探索者の前、肖像画の隣にペトラが立ち、微笑みを浮かべる。
「パンフレットにも書いてあった事だよ」
「自我が込められた絵画こそ至上の価値を持つ。この肖像画は……ううん、ここにある沢山の絵画は、あとひと押しで名画の山になるんだ」
「自我の器を変えるだけさ。死ぬわけじゃない。むしろ、何百年も大事に大事にされて、今よりもずっと沢山の物事を知る事が出来る」
「それはすごく、素敵な事だと思う。この状況を見る限り、僕はそれになれそうもない。君がすっごく羨ましいよ」
といった事を述べ、探索者に肖像画に触るよう要求する。
口調、内容はKPの好みに合わせて改変してOK。
〈肖像画に触る〉
【08.エンディング/ED1】に移行
〈肖像画に触らない〉
ペトラは残念がり、その顔が深淵を思わせる黒に染まる。
探索者達は空気が急激に薄くなったような息苦しさに、指一本動かせない程の重圧に襲われ、目も鼻も見えない「ペトラだったもの」が、にちにちと音を立てて赤黒い笑みを浮かべる。
★正気度喪失【1/1D6】
正気度喪失後、【07.逃走劇】に移行。
07.逃走劇
肖像画がひとりでに浮かび上がり、探索者とペトラの間に立ち塞がる。
その巨体をがたんがたんと揺らしながら探索者に迫り、それに呼応してか他の肖像画の数々もかたかたと震えだす。
肖像画の向こう側からは、人のものとは思えない笑い声が響き渡った。
探索者の姿を描いた肖像画がひとりでに浮かび上がり、探索者とペトラの間に立ち塞がる。
肖像画は巨体を揺らしながら探索者に迫り、他の肖像画の数々もかたかたと震えだす。
その向こう側からは、人のものとは思えない笑い声が響き渡る。
肖像画に阻まれてペトラの姿が見えなくなった瞬間、二人の身体は自由に動く。
肖像画から逃れるため、探索者は来た道を戻る形で逃げる事になる。
また、これ以降POW減少ロールが発生し、POWが0になった時点で【08.エンディング/ED1】に移行する。
逃走:深層
踵を返して走り出す探索者の前に人形達が立ち塞がる。
肩に乗るほどに小さな人形だったはずの彼らは「探索者が何となく名前を知っているだけの人々」
と同じくらいの大きさに成長しており、探索者に向けてぎこちない動きで手を伸ばす。
探索者は〈回避〉を行う。
〈回避〉に成功する
人形達の手をかいくぐり、【逃走:中層】へ移行。
〈回避〉に失敗する
一体の人形が背に覆いかぶさるように抱きついてくる。
どこか聞き覚えのある声が探索者の耳元で誘うように囁き、人形の手が生身の人間のそれに変わる。
探索者は【1D2】の正気度・POWを喪失し、それが誰の声だったのか完全に忘れてしまう。
抱きついてきた人形を振り払うと【逃走:中層】へ移行。
逃走:中層
長い長い画廊を駆ける探索者達の背後で、こつこつこつこつと人形の足音が響く。
壁に飾られた風景画の数々は激しく揺れ、地面に落ちたものはその額縁を揺らして探索者に向かってくる。
パンフレットを詰め込んだラックががたがたと揺れ、そして倒れた。
何千枚ものパンフレットが一斉に羽ばたき、探索者達の前に壁となって立ちはだかった。
〈何らかの攻撃ロール〉に成功する
パンフレットの壁は白い光となって砕け散り、【逃走:表層】へ移行。
〈何らかの攻撃ロール〉に失敗する
何枚ものパンフレットが探索者の体にまとわりつき、紙面いっぱいに文字を浮かび上がらせて行く。
それと同時に紙面に浮かんだ文字が理解できなくなり【1D2】の正気度・POW喪失。
〈人形を投げつける〉
中層で出会った人形を持っている場合のみ可能。
技能ロールの必要はない。
人形とパンフレットの壁は白い光となって砕け散り、【逃走:表層】へ移行。
逃走:表層
背後からは無数の物音が聞こえる。その全てが探索者を未知の世界へ引き込もうとしている。
小さな抽象画の数々は探索者が接近するとふわりと宙に浮き、周囲を衛星のようにぐるぐると飛んでいる。
どこまでも続くかのように思われた画廊に、行き止まりが見えた。
画廊の最果てでは、重厚な造りの木製の扉が堅く口を閉ざしていた。
扉を開けようとすると〈POW14との抵抗表ロール〉が発生。
〈POW14との抵抗表ロール〉に成功する
【08.エンディング/ED2】へ移行。
〈POW14との抵抗表ロール〉に失敗する
扉はぴくりとも動かず、無数の絵画が雨のように探索者の背を強く打ちつける。
その瞬間、探索者は自我という自我を吸い尽くされる感覚と共に、自分の指先が薄らぎ、ぼろりと欠ける様を見てしまう。
不思議と痛みはない。それどころかとても心地がよく、「このまま全てを明け渡してしまっても良いのではないか?」と感じる程である。
【1D6】の正気度・POW喪失。
正気度・POW喪失後、雨のように打ち付けた絵画の衝撃で、扉がほんの少しだけ開く。
扉を開くと【08.エンディング/ED2】へ移行。
何もせずにいると【08.エンディング/ED1】へ。
08.エンディング
ED1/絵画となる事を選択、あるいはPOWが0になる
ふと気がつくと、探索者の前には沢山の人が群がっていた。
豪勢な柵の向こう側で、パンフレットを片手に探索者をじっと見つめて感嘆の息を漏らしている。
ここではない遠く離れた場所でも、同じように見つめられ、賞賛されている。
探索者の身体は名画となって、世界各地に散らばった。
それでも自我はひとつであり、身体を通じて世界中の人々の反応が手に取るように分かった。
その万能感は、例えようもない幸福であった。
最も大きな身体――最高傑作である自画像の前に、一人の男が立った。
マスクとサングラスで顔を隠しているが、それでも探索者は彼の正体が理解できた。
誰もいない美術館の中で、男はマスクを下ろしてサングラスを少しだけずらす。
そこには、かつての探索者の顔があった。
「この身体、有効活用させてもらうよ」
その声は紛れもなくペトラのものだった。
「君に絵画の身体をあげる代わりに、僕は抜け殻となった身体を貰う」
「お互いとっても幸せで、損するものは何もない。Win-Winの取引ってやつだね」
ペトラはくすくすと笑う。探索者も一緒になって笑いたかったが、絵画に口はなかった。
「違う景色が見たくなったなら、どこへでも連れて行ってあげるよ」
「名画となった君の価値は、少し動かすだけで容易く怨嗟と混沌を生み出す事が出来る」
「それはとても、素敵な事じゃあないか」
ペトラは「またね」と手を振って、次の瞬間にはその場から消えていた。
ペトラの言葉を聞いても、絶望は一切なかった。
それどころか、幸福と希望に満ち溢れていた。
絵画としての幸せを噛みしめながら、探索者は彼に対して深く感謝の念を捧げた。
(探索者ロスト)
ED2/画廊からの脱出
扉の向こうは暗闇だった。
探索者の身体は闇の中へと落ちて行き、後ろから追ってきていた絵画の数々も探索者に続いて落ちて行く。
宙を舞う絵画はそれぞれが白い輝きを放ち、光の雨となって探索者の身体に降り注いだ。
視界が暗闇から白に染まり、身体がふわりと浮かび上がる。
「ヒトとして生きる事を選んだんだね。少し残念だけど、それもまあ、ひとつの選択だ」
ペトラの声が聞こえたが、応える前に探索者の意識はすうっと遠くなった。
★POW全回復
目が覚めた時、探索者は長椅子の上に寝かされていた。
美術館の制服を着た男がすぐさまこちらに近付き、身体に異常はないか尋ねてきた。
彼の話によると、探索者は美術館の順路内で倒れていたらしい。
探索者は細長い通路の先へ行こうとしたら停電に遭った事を説明したが、彼は怪訝な顔で首をひねった。
「当館にはそのような通路は御座いませんし、停電も起きておりません。悪い夢でも見ていたのではないでしょうか」
悪い夢だったのかもしれないし、探索者の理解を超えた現実だったのかもしれない。
――ただ一つだけ言える事は、探索者は平穏な日常に帰ってきた。
それだけは、確かな現実だった。
ED3/血塗られた舌に敗れる
血塗られた舌の無慈悲な一撃を受け、探索者の身体は壁に叩きつけられる。
その衝撃で壁から落ちた絵画の数々は、地に着く前に真っ黒な灰になって消えてしまった。
……いや、落ちたものだけではない。壁に掛けられた絵画が次々と灰と化していく。
それと同時に、何かとても大切な、かけがえのないものが音もなく消えて行く感覚がした。
血塗られた舌の身体が大きく脈打ち、その異形の姿が人間の姿に収束していく。
「大人しくしていれば死ぬ事はなかったのに。勿体ない事をしたね」
ペトラの姿で、ペトラの声で、「それ」は淡々と言う。
急速に生命が流れ落ち、暗くなってゆく視界の中――「それ」は確かに、冒涜的な笑みを浮かべていた。
(探索者ロスト)
ED4/血塗られた舌に勝利する
探索者の攻撃を受け、血塗られた舌は大きくよろめき全身の肉という肉が大きく脈打つ。
「――あははっ! まさかここまで抵抗するとはね! 驚きだよ!」
探索者が瞬きをしている間に血塗られた舌は人間の姿――ペトラの姿に戻っていた。
先程までの無邪気な笑顔とは対照的な、悪意に満ちた微笑みを浮かべている。
「うん、いいよ。君達の頑張りに免じて今回は見逃してあげる」
ペトラが指を鳴らすと、壁に掛けられた絵画が一斉に白い光となって弾け飛んだ。
探索者の視界は真っ白に染まり、そして――
目が覚めた時、探索者は長椅子の上に寝かされていた。
美術館の制服を着た男がすぐさまこちらに近付き、身体に異常はないか尋ねてきた。
彼の話によると、探索者は美術館の順路内で倒れていたらしい。
探索者は細長い通路の先へ行こうとしたら停電に遭った事を説明したが、彼は怪訝な顔で首をひねった。
「当館にはそのような通路は御座いませんし、停電も起きておりません。悪い夢でも見ていたのではないでしょうか」
悪い夢だったのかもしれないし、探索者の理解を超えた現実だったのかもしれない。
――ただ一つだけ言える事は、探索者は平穏な日常に帰ってきた。
それだけは、確かな現実だった。
09.報酬
魂の画廊からの脱出
条件 | ED2到達 |
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対象 | 全員 |
内容 | 1D10の正気度回復 |
人形を持ち帰る
条件 | デッサン人形を持ったままED2到達 |
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対象 | 該当探索者 |
内容 | アーティファクト「身代わり人形」 あらゆるダメージを身代わりとして受ける。 発動タイミングは任意。 一度でも攻撃を受けると壊れてしまい、 人形の持ち主は肩代わりされた分と同ポイントの正気度を喪失する。 |
記憶の喪失(ペナルティ)
条件 | セッション中に3ポイント以上のPOWを喪失する |
---|---|
対象 | 該当探索者 |
内容 | 喪失POW数*5日間、肖像画で見た人物についての記憶が失われる。 ステータス変動はない、フレーバーに近いペナルティ。 |
10.利用規約・更新履歴
利用規約
こちらをご確認ください。
参考書籍
サンディ・ピーターセンほか(2004).『クトゥルフ神話TRPG』.株式会社KADOKAWA.
スコット・アニオロフスキーほか(2008).『クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルム』.株式会社KADOKAWA.
連絡先
製作 | ミナカミ |
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HP | https://dara.sakura.ne.jp/ |
minakamiryu■infoseek.jp |
報告・感想等ありましたらHPのメールフォームやSNS等で送って頂けると有難いです。
更新履歴
2023/12/28 | 「03.背景」にシナリオに含まれる要素を追加 |
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2023/10/16 | 他シナリオとレイアウト統一 |
2021/10/16 | 著作権表記、参考書籍を記載 |
2020/07/12 | 利用規約を修正 |
2017/08/17 | HTML版に差し替え |
2015/09/15 | 生還報酬を2D6→1D10に変更 |
2015/05/03 | 体裁統一、イベントテキスト追加、HP移転によりアドレス変更 |
2014/07/29 | 公開 |