百度目の蝶(ひゃくどめのちょう)

このシナリオは「クトゥルフ神話TRPG(第6版)」に対応したシナリオです。

推奨人数2~4人
推奨技能目星、図書館、生物学 or 医学、機械修理
準推奨技能説得、言いくるめ、聞き耳
戦闘有無行動によってはあり
所要時間約18~20時間(オンラインによるテキストセッション)

複数回使用する機会がある、または生還やある程度の情報取得に必要な技能を「推奨技能」、1回は使用する機会がある、またはさらなる情報を得るために必要な技能を「準推奨技能」と区分しています。

なお、所用時間はテストプレイを行った際にかかった時間です。
KPもPLも茶番好きかつ慎重なプレイスタイルのため、進行の仕方によっては所用時間が前後します。あくまで目安程度でどうぞ。

特に今回はシナリオ作成の経緯上、RPに時間をかけてテストプレイを行いました。
なので所要時間は表記より少なめに見積もっても良いかもしれません。

記法

シナリオの見方をご確認ください。

Copyright

本作は、「株式会社アークライト」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright (C)1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION

01.あらすじ

あなた達には「廻谷 創(めぐりや はじめ)」という共通の友人がいた。
しかし彼は一年ほど前にとある事件で家族を失い、数週間後に失踪した。
あなた達は彼の身に降りかかった不幸と失踪に多少は動揺したものの、現在は平穏な生活を送っていた。

ある休日、あなた達は揃って街中を歩いていた。
天気は快晴で外出日和……のはずが、にわかに辺りが白い霧に包まれる。
見る見るうちに周囲は先も見えない濃霧に包まれ、方向感覚も失われて行く。
数十分以上迷っているうちに濃霧は次第に薄れ――

――夜の街の中、あなた達の目の前に廻谷 創の姿があった。

※これ以降はシナリオのネタバレが含まれます。ご注意ください。

02.索引

概要
01.あらすじ
02.索引
03.背景
04.1日目(導入)
05.2日目および3日目概要
06.街中での調査
07.坂浦家
08.廃屋(1階)
09.廃屋(2階)
10.廃屋(地下/研究室)
11.廃屋(地下/角のない部屋)
12.山の奥地
13.クライマックス
14.エンディング
15.報酬
16.利用規約・更新履歴

03.背景

シナリオ概要

本シナリオは「過去の世界にタイムスリップした探索者が、行方不明になっていた友人と再会し、死別すること」が主題となる。
基本的な舞台は「現在から1年前の日本」だが、いつの時代にタイムスリップするかKPの好みで改変して構わない。
その場合、NPCの設定や探索で出る情報、演出は時代に合わせて修正すること。

シナリオに含まれる要素

出血描写、死体描写、殺傷、恐怖、NPCとの対立、NPCの殺害、NPCの死、1D100級の正気度喪失

このシナリオには上記の要素が含まれているが、事前にPLに知らせるかどうかはKPの任意。
要素としての度合いが薄いもの、行動によっては発生しないものも存在するため、PLから相談があった場合はシナリオ本文を見て適宜対応すること。
また、これはシナリオ作者の主観で要素をリストアップしたものだ。ここにはないがPLに知らせたい要素があれば自由に付け加えて良い。

舞台設定と大まかな流れ

舞台は「現在から1年前、廻谷創の妻子が事件に遭うまでの3日間」を永遠に繰り返す世界。
最初の2日間は平穏なものだが、3日目に事件が発生し妻子が死亡することが運命づけられている。

この世界を作り出したのは廻谷と邪神「ヨグ=ソトース」。
現在から1年前、妻子の死に耐えられなかった廻谷は、「例え3日目が絶望で終わっても、平穏な2日間が得られるのなら」と、ヨグ=ソトースにこの世界の創造を願った。

こうして作られたループ世界は不安定なもので、何度も同じ運命を繰り返すことで根幹を安定させる必要があった。
そして九十九回目のループを終え、百度目のループが始まったその時、探索者達はこの世界に迷い込む。
探索者の来訪という些末な変化によりこの世界は破綻し、3日後の午前零時を以て崩壊することが確定してしまう。
探索者がこの世界に迷い込んだのは偶然かもしれないし、ヨグ=ソトースの手引きかもしれない。

ヨグ=ソトースは「タウィル・アト=ウムル」の姿となり、探索者に一つの取引を提案する。
「期限までにこの世界の創造を願った術者――廻谷創を殺せば、元の世界に帰す」
廻谷の殺害を明示された探索者が、限られた時間の中でどのように考え、行動するかがこのシナリオの肝となる。

事件について

ある日の朝、廻谷の妻子が殺害された事件。
犯人はとある事故の犠牲者の遺族であり、ジャーナリストである廻谷の取材時の言動に恨みを持った末の犯行だった。

事件そのものに怪異は関係していないが、この世界においては重要な出来事として深く関連付けられている。

NPC:廻谷 創(めぐりや はじめ)

STR8CON10POW9
DEX12APP12SIZ12
INT16EDU18正気度0
耐久12MP9db0
武器
なし
装甲
なし
呪文
ヨグ=ソトースとの接触(ルールブックP267)
ただしフレーバー設定のため、シナリオ中では使用しない。
技能
アイデア(80) 幸運(45) 知識(90) クトゥルフ神話(20) 目星(50) 聞き耳(50) 回避(24) 隠れる(30) 忍び歩き(30) 追跡(30) 鍵開け(10) 変装(10) 言いくるめ(50) 図書館(50) 歴史(70) オカルト(70) 写真術(80) コンピュータ(30) 母国語(90) 英語(50) ラテン語(50)

技能値は「クトゥルフ2010」のジャーナリストを元に設定しているが、ステータスや技能値はKPの好みで変更しても構わない。
(ただしシナリオ展開の都合上、CONは10以下が望ましい)
廻谷が技能ロールを行うかどうかもKP裁量となる。

関東の出版社で働くジャーナリスト。30歳男性。妻と息子1人を持つ愛妻家。
やや頑固で感情の機微に疎いところがあるが、根は善人。好奇心が強い。
オカルト方面の記事担当で日々精力的に活動しており、記事のクオリティは安定している。
つい先日、とある事故の犠牲者の遺族に取材を行い、その時の言動が原因で遺族から恨みを買っているが、本人にその自覚はない。

このループ世界を願い、作り出した張本人だが、その記憶は失われている。
事件のこともそれ以降のことも知らない、この世界の住人として振る舞う。

この世界ではタウィル・アト=ウムルの加護を得ており、物理的な要因で死ぬことはない。
棒で殴ろうとすると手が滑って棒がどこかに飛び、車に轢かれそうになると車がスリップして廻谷を避ける。
取り押さえて確実に攻撃を加えようとしても、何かしらの「偶然」で廻谷への攻撃は全て外れてしまう。
彼を殺すには、タウィル・アト=ウムルとは異なる超常的な力を借りる必要がある。

NPC:廻谷 美智子(めぐりや みちこ)、廻谷 聡司(めぐりや さとし)

廻谷の妻と息子。美智子は30歳で聡司は10歳。
この世界の住人であり、3日目の事件により両者とも死亡する運命下にある。
基本的に3日目の事件直前に遭遇するだけだが、探索者の行動によってはそれ以前のタイミングで会うこともあるかもしれない。

NPC:タウィル・アト=ウムル

廻谷の願いを聞いてループ世界を創った神「ヨグ=ソトース」の化身の一つ。
フード付きのローブを纏った人間の姿をしているが、その顔を見ることはできない。
もしもローブを脱がせてその中身を見た場合、【1D20/1D100】の正気度喪失が発生する。

タウィル・アト=ウムルとして姿を現すのは【13.クライマックス】のみ。
それより前は廻谷の家族やテレビ、辺りの動植物の口を借りて探索者と接触を図る。

備考:シナリオの大まかな流れ

3日間のうち1日目は導入とタウィル・アト=ウムルによる取引の提示が行われ、2日目以降は得た情報を元に探索を行い、3日目の深夜に最終決断を下すことになる。

探索中の行動方針は
「廻谷を殺す手段を探す」「化身に頼らず脱出する手段を探す」「廻谷に降りかかる因果を変える」
の3種が挙げられる。
いずれの行動をとっても最終的に廻谷は死亡するが、死に方や死の間際の感情が変化する。

「廻谷を殺す手段を探す」「化身に頼らず脱出する手段を探す」に関しては中途半端に達成した状態の場合、探索者の生還率が低下する。
生還が不可能になるわけではないため、探索がどのような結果に終わろうとも出目さえ良ければ生還可能。

なお、最良のエンディングは「廻谷に降りかかる因果を変え」、「廻谷を殺す手段を用いてタウィル・アト=ウムルを攻撃し」、「化身に頼らず脱出する」必要がある。
つまりは上記3つの行動方針を全て達成しなければならない。

04.1日目(導入)

1日目は導入とタウィル・アト=ウムルによる取引の提示が発生する。

導入:1年前の世界へ

探索者達が連れ立って街中を歩いているシーンから開始する。
街中を歩く理由はKPとPLで自由に決め、セッションの時間に余裕があるなら平和なひと時を演出しても良い。

探索者達が街中を歩いてしばらく経つと、にわかに辺りが濃霧に包まれてしまう。

INFO / EVENT

空は見事な快晴だというのに、足元には霧が立ち込めていた。
通行人も車もそれを怪訝に思う様子はなく、みるみるうちに辺りは濃霧に包まれる。
自分の足元も見えず、じっとりと湿った空気がまとわりつく。
都会の喧騒は徐々に遠のき――そして、濃霧と静寂の世界が訪れた。

進むなり待つなり何らかの行動を起こすと、霧は徐々に晴れる。

INFO / EVENT

探索者達が音を頼りに歩を進めると、不確かであった音が徐々に鮮明になって行く。
それは家電量販店のコマーシャルソングのようでで、
音が鮮明になるにつれて霧が徐々に薄れてゆき――

――濃霧が晴れると、探索者達は家電量販店のゲーム機のコーナーに立っていた。
ゲームソフトのパッケージがずらりと並び、液晶テレビは新作の映像を流している。
一人の男がそれらの前に立ち、探索者達に背を向けてゲームソフトを物色しており、その手にはケーキ屋の箱があった。

ここから探索者達は1年前の世界に迷い込む。

導入:1年前の世界での再会

スタート地点は家電量販店のゲーム機コーナー。時刻は20時。
探索者達の数メートル先に廻谷の姿があり、ゲームの棚をじっと見ている。

探索者達が声をかければすぐにこちらに気付き、声をかけなければそのうち廻谷の方が探索者達に気付く。
廻谷は探索者達に親しげな様子で自分の近況を話したりする。
彼は息子の誕生日プレゼントの下見のためにここを訪れており、ケーキ屋の箱も誕生日祝いのために買ったもの。
この辺りで彼には妻子がいること、そして家族を大事にしていることを示すといいだろう。

廻谷は1年前までの記憶しか持っておらず、最近のニュース等の話題には知らないと返す。
ゲーム機の品揃えを観察したり、廻谷との話の内容によっては「ここが1年前の世界である」ことも察するだろう。
妻子が事件によって死んでおらず健在であることからも察することが出来るかもしれない。
「ここが1年前の世界である」ことに気付いた探索者は【1/1D6】の正気度喪失

ある程度話をしたところで家電量販店は閉店し、廻谷は探索者達と別れて家に帰る。
探索者達が廻谷について行こうとすると、家族水入らずで過ごしたいからと断るだろう。
廻谷との顔合わせの意味合いが強いイベントのため、無理についていく必要はない。

なお、廻谷の電話番号は失踪当時から変わっていないため、探索者達の携帯から廻谷に電話をかけることはできる。
探索者達が1年前から電話番号を変更していないのなら、廻谷から連絡を取ることも可能である。

廻谷と別れた後は、ビジネスホテルなどの宿泊施設で一夜を過ごすことになる。

導入:神の接触

宿泊場所を確保して一息ついた時点で発生。時刻は22時。
ホテル等の宿泊施設や探索者の自宅など、場の流れに合った場所で良い。
ただし部屋にテレビがあり、探索者達が同じ部屋に集まっているのが望ましい。

探索者達が同じ部屋に集まっていると、突然テレビの電源がついてニュースが流れ始める。
ニュースキャスターは最初はごく普通にニュースを読み進めているが、次第に親しげな口調に変わり、「タウィル・アト=ウムル」として探索者達に接触する。

もしも探索者達がばらばらの部屋にいたり、部屋にテレビがない場合、タウィル・アト=ウムルは別の姿を借りて同時多発的に探索者達に接触する。
烏の姿を借りてそれぞれの部屋の窓から語り掛けたり、ホテルのルームサービスの口を借りるかもしれない。

探索者達と接触したタウィル・アト=ウムルは、この世界の概要と廻谷の殺害を依頼する。

INFO / EVENT

「迷える子らよ、この声は届いているのかな?」
「ようこそ。ここは、廻谷創が願った世界。幸福に始まり絶望に終わる三日間を繰り返す、20XX年の日本」(※年代はセッションをする年の1年前に適宜修正すること)
「ぼくがわざわざ説明に来てあげたのは親切心じゃあない。きみたちと取引がしたくてね」

「ぼくはさっき、ここは三日間を繰り返す世界と言った。不可避の運命を幾度も繰り返す楽園であり、地獄でもある」
「……ところが、この世界はまだ若い。運命の結びつきがまだ不安定で、何度も繰り返すことで、あらゆる可能性の上に横たわる運命の糸を束ねて行かなければならなかった」
「束ねた糸は九十九。あと一回。この三日間をクリアすれば運命は強固なものとなり、完璧な輪が完成するところだった」
「過去形で言っているのが分かるね? そう、きみたちという第三者が入ったことで、束ねた糸も、この世界における繰り返す輪も崩れてしまった。この世界は、三日後に崩壊して跡形もなく消えてしまう」
「蝶の羽ばたきが遠い土地の竜巻を引き起こすように、きみたちがこの世界に入り込む、それだけでこの未成熟な世界は致命的なダメージを受ける」
「簡単に言うと、廻谷創が願った世界はきみたちのせいで三日後に……正確に言えば五十時間後に、崩壊する。勿論きみたちもそれに巻き込まれてしまう」
「状況は分かってもらえたかな? その上で、きみたちにとって悪くない話があるんだ」

「この世界が消滅したあと、ぼくは後始末をしなければならない」
「そうなると、この世界を願った張本人である廻谷創が少し面倒でね」
「何が言いたいか分かるかな? そう、きみたちには廻谷創を殺してもらいたい。不完全とはいえ運命に守られているから、一筋縄ではいかない。でも、手段はこの町に眠っている」
「廻谷創を殺してさえくれれば、きみたちを元いたところに帰してあげる」
「勿論、嫌なら殺さなくても構わない。ぼくの手間が少し増えて、きみたちはこの世界から放り出されてどこか別の場所に流れ着くだけさ」

「ぼくは明後日が終わる頃、廻谷創の元を訪れる。その時に、きみたちの答えを聞こう」

タウィル・アト=ウムルは上記の内容を述べると、探索者達の質問に答えることなく一方的に姿を消す。
なお、このタイミングで今いる場所が1年前の世界であるとここで知らされた場合、探索者達は【1/1D6】の正気度喪失を行う。

タウィル・アト=ウムルが去った後、探索者達は〈アイデア〉をロールする。
〈アイデア〉に成功した探索者は「この世界に迷いこんだということは完全に閉ざされた世界ではなく、どこかに出口がある。それを見つけ出す、あるいは出口を作り出すことで、タウィル・アト=ウムルの依頼を成し遂げなくても脱出は可能だ」ということに気付く(「化身に頼らず脱出する手段を探す」ルートの明示)。

またこの時、〈アイデア/2〉に成功する程度の出目だった場合、「この世界に侵入するだけで世界が崩壊するほどの影響を与えられるのならば、廻谷に降りかかった『妻子の死という絶望』を回避することも出来るのではないか? しかし、因果を変えることは自分達の生還に直結しないだろう」ということに気付く(「廻谷に降りかかる因果を変える」ルートの明示)。

〈アイデア〉による行動方針を示したあたりで1日目は終了。2日目に移行する。

05.2日目および3日目概要

2日目以降は町を調査し、手がかりを探していくことになる。
シナリオ上で設定された調査ポイントは以下の4つ。

1.街中での調査(2および3に繋がる情報を獲得)
2.坂浦家
3.廃屋(4に繋がる情報を獲得)
4.山の奥地

街中での調査を起点に他の調査ポイント情報を獲得し、好きなところから調査を進めていくことになる。
それぞれの詳細情報は後述。

時間管理について

2日目~3日目の行動可能時間は10:00~24:00。
時間経過は技能ロールではなく、探索個所に応じて固定で経過する。

街中での調査:計4時間
廃屋にまつわる噂1時間
廃屋の住所1時間
事件の前兆1時間
坂浦家の住所1時間
坂浦家:計4時間(17:00以降は訪問不可)
対話と説得2時間
ペット捜索2時間
廃屋:計10時間
移動(往復)2時間
調査(1階)2時間
調査(2階)3時間
調査(地下)3時間
山の奥地:計8時間
奥地までの移動(往復)3時間
手伝い4時間
六分儀修理1時間

これらの時間経過には食事や休憩の時間も含まれる。
また、廃屋や山のふもとまでの移動はタクシーやバス等の移動手段を前提としており、もしPLがそれを提案しても経過時間にボーナスは入らない。

2日目の行動可能時間を超えて探索を行った場合、十分な休息が取れるかどうか〈CON*5〉で判定する。
判定に失敗した場合、その探索者は疲労により3日目のあらゆる技能ロールに-10の修正が入る。
もしも休むことなく徹夜で行動した場合は判定を挟まず技能ロールに-10修正を入れても良い。

全ての探索・交渉を達成しようとした場合、2日目と3日目の行動可能時間の都合上、どう行動しても「行動可能時間の超過」あるいは「特定の交渉における難易度上昇」が発生する。

例えば街中での調査と坂浦家で以下のように時間を消費した場合、2日目で残された時間は6時間となる。
10:00-14:00……街中での調査
14:00-18:00……坂浦家
ここから廃屋調査に向かうと合計10時間を消費し、行動可能時間から4時間オーバーしてしまう。
いずれかの階層の調査を諦めると「行動可能時間の超過」は発生しないが、廃屋で取得できる情報は生還に最低限必要なものが多いためあまり推奨しない。

時間超過を避けるために3日目に廃屋の調査を行った場合、以下の通り時間を消費し、残された時間は4時間となる。
10:00-20:00……廃屋調査
ここから山の奥地まで移動する場合、手伝いイベントは発生せず、その後の交渉の難易度が上がってしまう。

これはあくまで基本的な時間経過設定のため、実際の進行やPLの提案によっては時間経過を短縮したり余分に経過させても良い。

また、2日目に廃屋調査をしない、3日目は山の奥地にしか行かないなど、時間が余る場面は必ず発生する。
その間に何をするかは特に設定されていないため、余った時間は省略するほか、NPCとの交流や次に向かう場所の下調べ、必要物資の購入など自由に演出して問題ない。

イベント:空の亀裂

2日目の行動開始前に発生するイベント。
宿泊場所を出た時点で、探索者は空にひびが入っていることに気付く。
通行人はそれに気づいた気配はない。

INFO / EVENT

外に出ると、穏やかな日光が探索者達を照らす。
ずっと日向にいればじっとりと汗をかきそうだが、日陰にいれば涼しくて心地よい。
快晴ということもあってか、家族連れと思しき人々が笑顔で歩いている。
雲一つない青空を見上げ――そして、空に浮かぶ光景に探索者達は立ちすくむ。

亀裂が走っていた。
どこまでも続きそうな青空は、いびつな線によって歪められていた。
亀裂は音もなく、ただそこに存在しているだけだ。
ただそれだけなのに、見ているだけで足元がぐらつくような不安感が探索者の胸中に生まれた。

★正気度喪失【1/1D4】

この正気度喪失後、廻谷から電話が入る。
廻谷もまた空の異常に気付いており、探索者達と同じ状況にあると分かると行動を共にする。

廻谷が技能を使用して調査を補佐するかどうかはKP裁量。
この世界の創造者とも言える廻谷はこの世界に守られており、特殊な武器で攻撃しない限り一切のダメージを与えられないことに注意すること。

イベント:虹色のうねり

3日目の行動開始前に発生するイベント。
宿泊場所を出た時点で、探索者は空の異常が進行している様を目撃する。

INFO / EVENT

晴れやかな青空に浮かぶ亀裂が、広がっていた。
亀裂のあちらこちらで青空が剥離し、その向こう側が見える。
青空の向こう側には――極彩色の虹が満ちていた。

虹は無数の球体で構成され、一つ一つがまるで意志を持っているかのように蠢いていた。
あの空の向こう側は一面の虹に満ちているのだろうか?
探索者達が元いた世界も、気付いていないだけで「あれ」に覆われているのだろうか?
緩慢に動く虹は何も答えず、ただただ青空の向こう側に存在しているだけだった。

★正気度喪失【1/1D6】

イベント:果たされる因果

「廻谷に降りかかる因果を変える」ルートを達成しないまま3日目を迎えると、【イベント:虹色のうねり】後に発生する。

空の異常を目の当たりにした後、廻谷は探索者達と連絡を取って合流する。
しかし合流直後、廻谷の妻子が廻谷に忘れ物を届けるために現れ、坂浦家によって殺害される。

殺害現場を目撃した探索者達は【1/1D4】の正気度喪失
すぐさま警察が現れ坂浦家は逮捕され、廻谷は錯乱状態のまま妻子とともに救急車に乗って姿を消す。

その為、廻谷は3日目は探索者達に同行しなくなる。

06.街中での調査

街中での調査部分において、どこをどのように調査するかはシナリオ内で明確に設定しない。
探索者がどのように調査するかに応じて探索ポイントおよび調査技能を設定し、調査の方向性に応じて情報を開示する。

いずれの情報も何らかの調査技能に成功しないと取得できず、1人1回挑戦可能。
全員が失敗して再挑戦する場合は相応に時間を経過させること。

探索者達が行動指針を決めかねている場合、廻谷が提案する形で誘導しても良い。

情報:廃屋にまつわる噂

何らかの記事ベースで調べた場合は投書欄に気になる記述を見つけ、聞き込みで調べた場合は通行人から以下の内容を聞き出すことが出来る。

INFO / EVENT

我が家の近所には空き家があります。
偉い教授の方が住んでいたようですが交流はなく、亡くなってからも家の引き取り手はなくそのままでした。

ところが最近になって、家の明かりがついていたり、何かの物音が聞こえるようになりました。
おそらくホームレスだろうという噂が流れているのですが、奇妙なことに、誰一人そのホームレスの姿を見たことがないのです。
役所に訴えて調べてもらっても、誰かが暮らしている形跡はあっても張本人は見つかりませんでした。
不思議な話ですが、それでも得体の知れない誰かが住んでいるのは気持ち悪くて仕方がありません。
こういった場合、どうすれば良いのでしょうか?

情報:廃屋の住所

住宅街辺りまで行って聞き込みや、雑誌媒体で情報を知った場合は編集部にかけあうなど。
雑誌やネットには載ってないと思われるため、基本的に対人での情報収集推奨。
技能に成功すると【08.廃屋(1階)】に行けるようになる。

情報:事件の前兆

廻谷の評判や事件の前兆について調べる。
ニュースになったりネットで噂されるような話ではないため、廻谷本人、あるいは廻谷が担当するオカルト雑誌の編集者から話を聞く必要があるだろう。

INFO / EVENT

「廻谷の件ですか? ああ、アレについてですね」
「少し前にちょっとした事件が起きましてね。一見不幸な死亡事故だったんですが、廻谷はそれにオカルトの可能性を感じて取材をしたんですよ」
「廻谷は少しデリカシーに欠けるところがあって、取材を申し込んだタイミングも、取材の態度も、作った記事も遺族の心情を逆なでするものでした」
「結局はオカルトでも何でもない不幸な事故。廻谷は遺族の心情にもう少し寄り添うべきだったんですが、それが出来なかった」
「遺族の方からは恨まれていると思いますよ。ただ、そのことを私から言っても廻谷は聞く耳を持たず……」
「廻谷は悪いやつじゃないんですが、どうもそういう頑固なところがねぇ……」

廻谷本人は自分の行動がデリカシーに欠けるものだったこと、遺族の恨みを買っていることには気づいていない。
その為、彼自身から話を聞いた場合は「ある死亡事故について調べたものの結局はハズレで、おまけに遺族からクレームを受けた」程度の内容しか出てこないだろう。

情報:坂浦家の住所

坂浦家(遺族)の住所は、オカルト雑誌の編集部など、直接かかわりのあったところから聞き出す。
探索者の中に警察関係者がいるのなら、事件の資料を探すことで見つけられるかもしれない。

技能に成功すると【07.坂浦家】に行けるようになる。

なお廻谷は遺族の住所を知らないため、彼から聞き出すことはできない。

07.坂浦家

廻谷が取材した、とある死亡事故の遺族の家。
廻谷は訪問に難色を示し、また連れて行ったとしても坂浦家側から拒絶される。
そのため坂浦家に上がれるのは探索者のみ。
また、17:00以降に訪問すると断られる。

坂浦家の家族構成は以下の通り。
死亡事故の被害者となったのは母である坂浦 聖子。

坂浦 藤二(さかうら とうじ)
坂浦 聖子(さかうら せいこ)
長女坂浦 美波(さかうら みなみ)
長男坂浦 北斗(さかうら ほくと)
ペットおたふく(セキセイインコ)

探索者達への対応は主に藤二が行う。
美波は家事をしており、北斗は隣室から探索者達の様子を伺ったりおたふくに餌をやったりしている。

藤二に廻谷について話を聞くと、
廻谷が妻を失ったばかりの自分達にずかずかと入り込んできたこと、
オカルト関連ではなさそうだと察するとあからさまに落ち込んだ様子を見せたこと、
それでも記事を作り、その内容に自分達に対する謝罪や思いやりが感じられなかったこと、
抗議をしても形だけの謝罪が為されたことなど、
廻谷が自分達遺族の心を踏みにじったことに対する恨みを吐露するだろう。

北斗や美波に尋ねてみても同様の反応だが、北斗は非常に無口で話すにしても呟く程度。
美波はかなり攻撃的で、少し話すとすぐに家事を口実に探索者達から離れようとする。

行動:遺族を説得する

藤二への説得は文字通り〈説得〉で行う。
〈説得〉に成功すると、藤二の廻谷に対する敵意はいくらか緩和され、3日目に事件を起こさなくなる。

美波・北斗の廻谷に対する敵意も緩和する必要があるが、こちらは〈説得〉は不要。
2人を気にかけるRPさえすれば、3日目に事件を起こさなくなるだろう。

また、坂浦家を去る直前にペットのおたふくが家から逃げ出してしまう。
坂浦家の面々は探索者に頼みはしないが、もしおたふくを探す場合は追加で2時間消費することで見つけ出せる。

おたふくを探さずに坂浦家を後にした場合、3日目に迷子になっていたおたふくが車道に飛び出し、運転を誤った車が廻谷の妻子を襲う事故が発生する。
おたふくに悪意はないが、「坂浦家の一員」という廻谷家に死をもたらす駒の1つであるため、探索者達はおたふくにも干渉して因果を変えなければならない。

行動:犯罪が発生しない状況に追い込む

坂浦家の3人を拘束あるいは殺害することで事件が発生しないようにすることも可能。
いずれにしても物音を立てないようにしなければ隣人が異常事態を察してしまう。

隣人の通報により警察が坂浦家を訪ね、もし3人を拘束していた場合は解放されてしまうだろう。
拘束であっても殺害であっても3人は事件を起こせなくなるが、代わりに警察が捜索に入る。

探索者達全員が〈幸運〉をロールして半数以上が失敗すると、3日目の朝に警察が探索者達の元に現れて逮捕する。
3日目は一切の行動が不可能になり、時間切れが迫るとタウィル・アト=ウムルの手によって【13.クライマックス】の舞台へ連れて行かれる。
しかし全ての持ち物・取得物を没収されているため、探索者達にできることはない。
ただその場で終わりを待つだけになるだろう。

なお、こちらの場合もおたふくに何らかの処置を加えなければ、【行動:遺族を説得する】と同様に偶発的な事故で廻谷の妻子が死ぬ。

08.廃屋(1階)

町の中心部から少し離れた住宅地に存在する2階建ての木造住宅。
かつては地質学の教授が一人で住んでいたが、死後誰にも引き取られず空き家のままだった。

しかし最近になってヨグ=ソトースの息子がこの家に住み着き、ヨグ=ソトースを招来するためにミ=ゴの協力を得て時空にまつわる研究をしていた。
研究は順調に進んでいたが、今から数日前、彼はティンダロスの猟犬を目撃してしまう。
ヨグ=ソトースの息子は猟犬から逃れるために地下の一室を改装して隠れ、そして探索者達が廃屋を訪れるのとほぼ同じタイミングでティンダロスの猟犬も廃屋内に現れる。

探索者達はティンダロスの猟犬の動向に注意しながら廃屋を探索することになるだろう。
廃屋の探索ポイントは以下の通り。

1階居間
2階書斎
地下研究室、角のない部屋

1階から2階へは特に何の制約もなく階段で行き来できる。
1階から地下は階段の前に鍵のかかったドアがあり、ドアを開けない限りは移動できない。
【地下室の鍵】か〈鍵開け〉でドアは開く。
破壊することでもドアは開くが、後述の【備考:ティンダロスの猟犬の行動】に引っかかるため非推奨。

備考:ティンダロスの猟犬の行動

探索者達が廃屋を訪れた時点で2階におり、ヨグ=ソトースの息子を探している。
探索者達が2階に上ると2階の寝室(※探索ポイントではない)に移動し、書斎に入ると2階廊下→1階→地下へと移動する。

基本的に探索者とは遭遇しないが、物音や臭いで存在を知らせ恐怖心を煽る存在。
廃屋に上がった時や2階に上がった時、その他適当なタイミングで足音を響かせたり腐臭を漂わせたりして猟犬の存在を暗示すると良い。

探索者達が【09.廃屋(2階)】を一通り調べ終わった時点で猟犬は地下室の角のない部屋の前に到達し、地震を起こす。
この時〈幸運〉に成功しないと書斎の棚から落ちてきた本で負傷し耐久が-1される。

探索者が地下室に到達する頃にはヨグ=ソトースの息子と猟犬の戦いは終わっており、【11.廃屋(地下/角のない部屋)】の扉前では猟犬が息子を咀嚼する音が聞こえる。
10.廃屋(地下/研究室)】の調査が終わる頃には猟犬は捕食を終え、廃屋から姿を消すだろう。

なお、探索中に大きな物音を立てると猟犬が様子を見にやってくる。
すぐにその部屋を去らなければ猟犬と鉢合わせし、獲物と見なされてしまうだろう。

INFO / EVENT

強烈な腐臭が部屋に満ちた。
黒い霧の向こう側から『それ』がひたりひたりとにじり寄る。
四つ足から青い膿がしたたり落ち、床がわずかに煙を吹く。
幾重にも並んだ牙は膿とともにぎらぎらと輝き、その眼光は鈍く燃えていた。
その体躯は絶えず揺らぎ、正体を見極める術はない。
――しかし、この世の悪意を集約したかのような唸り声は、彼が『捕食者』であることを明確に表していた。

★正気度喪失【1D3/1D20】

猟犬は探索者達を獲物と見なしたとはいえ、現時点ではヨグ=ソトースの息子の方が優先度が高い。
そのため猟犬は探索者達のうちランダムに選んだ一人に攻撃を加え、すぐにその場を去る。
勿論それは一時的な退却であり、いずれ猟犬は再び探索者の元に現れる。
猟犬が現れるタイミングや対抗方法については【12.山の奥地】を参照。

「ティンダロスの猟犬」

STR-CON-POW-
DEX11APP-SIZ-
INT-EDU-正気度-
耐久24MP24db+1D6

ステータスは上記のものを使用し、武器や行動は「クトゥルフ神話TRPG(P.184)」に準拠する。

調査:居間に入る

INFO / EVENT

泥棒でも入ったのかと見紛う程に散らかった部屋だった。
床には衣類やインスタント食品の容器が落ちており、【テーブル】の上には本やチラシが散乱している。
右手の壁際には【本棚】と【標本棚】があり、標本棚の中には大小さまざまな石が並んでいた。

色々なものが散乱している部屋ではあるが、調査が出来るのは「テーブル」「本棚」「標本棚」の三つ。
PLの提案によっては懐中電灯などフレーバー程度のアイテムが見つかるかもしれない。

調査:テーブル

地質学の本や科学系の雑誌、新聞や新聞に挟み込まれたチラシなどが散乱している。

ACTION

〈目星〉
チラシの裏に地図が描かれている事に気付く。
この町にある小さな山の地図のようで、登山道からは離れた場所に×印と共に「盟友」と書かれている。
目印が多数メモされているので、地図を見ながらだと×印の場所にも行くことができるだろう。
12.山の奥地】への移動が可能になる。

調査:本棚

地質学に関する入門書から専門書まで幅広いレベルの本が揃っている。
中には論文のコピーと思しきものもあり、いくつかのページには付箋が貼られている。
どうやら珍しい鉱石についての記述のようだが、内容を読んでもよく分からない。

ACTION

〈図書館または地質学〉
付箋が貼られたページの内容を元に図鑑を調べ、鉱物の写真を発見する。
また、この鉱物はこの町にある小さな山にも存在すると分かる。

RPで「付箋の情報をもとに図鑑を調べる」といった演出がなされた場合、技能ロールなしで情報を開示する。

調査:標本棚

手の平いっぱいのものから米粒ほどの大きさのものまで、さまざまな鉱物が並んでいる。
小さいものはガラス瓶に入れられ、破損や紛失を防ぐよう注意が払われていることが分かる。

ACTION

〈目星〉
奥の方から【空のガラス瓶】を発見する。
【青い体液】を入手するにはこれが必要。

ACTION

〈目星(鉱物があるかどうか探す)〉
【調査:本棚】の技能情報を取得している場合のみロール可能。
標本棚から【珍しい鉱物】を入手する。
ミ=ゴとの交渉材料。あれば有利レベルなので重要度はそれほど高くない。

RPで「本棚で見つけた写真を元に探す」といった演出がなされた場合、技能ロールなしで発見【珍しい鉱物】を発見する。

09.廃屋(2階)

寝室やベランダがあるが、調査可能な部屋は書斎のみ。

INFO / EVENT

居間は生活臭の漂う部屋だったが、こちらは紙屑が散乱しインクの匂いに満ちた部屋だった。
入口以外の三方を【本棚】が囲み、ぎっしりと本が詰め込まれている。
それでも足りないのか、あぶれた本は【机】や床の上に平積みにされていた。

調査が出来るのは「本棚」「机」の二つ。

調査:本棚

本や紙が散乱しているが埃はかぶっておらず、筆記用のインクも固まっていない。
また、技能に成功しても失敗しても引き出しの中から【地下室の鍵】を見つける。
以降、【10.廃屋(地下/研究室)】への移動が可能になる。

ACTION

〈目星〉
机の上に置かれた本の中で一冊だけ、他とは異なる言語で書かれている本を見つける。
本を開けるとメモがあり、そこにはとある呪文の概要が書かれている。

INFO / EVENT

実に高度な暗号だった。
普通に読めば他愛ない童話としか思えないが、その裏には呪文が隠されていた。
実験に有用な呪文の為、スクロールと手順書を作成する。これを再解読するのはごめんだ。

以下の呪文【錨を手繰る】の概要を提示する。

呪文:錨を手繰る(いかりをたぐる)

オリジナル呪文。本シナリオ限定であり、生還後は忘れてしまう。

INFO / EVENT

呪文の概要
・詠唱者および詠唱者と接触している者を「その人物が最も長い時を過ごした世界」に移送する
・呪文の発動は所定の器具を用いて儀式を行う必要があり、それとは別に移送コストが発生する
・移送コストは【1D10】のマジック・ポイントおよび【1D3】の正気度ポイント
・「移送される者全員」が、各自でこれらのコストを消費する

呪文の発動に必要な儀式について
・「時間」「魔力を効率よく変換する器具」「発動のキーとなる呪文」の三要素が必要
・発動のキーとなる呪文は【スクロール】を読み上げるだけで条件を満たす
・器具は現在製作中。スクロールを読み上げ、これに触れるだけで条件を満たす仕様を想定している
・時間は夜中、月が正中する頃合いが望ましい。正中時刻以外で呪文を発動する場合、【10ポイント】のマジック・ポイントで補填する
・いずれかの要素が欠けた状態で呪文を発動した場合、呪文の成功率は著しく低下する

上記の説明と共に【スクロール】を入手する。比較的整った字で呪文のようなものが書かれており、これが「発動のキーとなる呪文」にあたる。
正中時刻については〈天文学〉で調べることが出来る。
〈天文学〉に成功し、「月が正中する時刻に呪文を唱える」と宣言するだけで【10ポイント】の補填は免除される。

調査:本棚

地質学の本の他に得体の知れない文字で書かれた本を多数見つける。
また、机から近い位置には大量のノートが入っており、表紙には「研究日誌」と書かれている。
研究日誌を解読し、重要な内容を洗い出すには〈図書館〉が必要。

ACTION

〈図書館〉
大半は意味不明な文章と数式の羅列だが、その中でも以下の記述を見つける。

INFO / EVENT

盟友の助力のおかげで研究は躍進している。
彼らの知恵と技術は素晴らしい。私一人ではひとつふたつの呪文を解読するだけでその生涯を終えていただろう。

鉱物の採取中、腕を怪我してしまう。
たったそれだけの変化なのに、偽者ではないかと盟友に疑いの目を向けられてしまった。
合言葉がなければ捕らわれてしまう所だった。
「我が頭脳は汝と共に」

(「我が頭脳は汝と共に」が合言葉。
ミ=ゴと相対してこの言葉がすぐに出そうにない場合は〈アイデア〉で思い出させる)

10.廃屋(地下/研究室)

【地下室の鍵】入手後、1階から地下へ移動できるようになる。
通路の途中にごく普通の扉があり、最奥部に円形の鉄の扉がある。

地下室到達時点では猟犬が円形の鉄の扉の向こうに存在する。
ここで円形の鉄の扉を開けた場合は猟犬と鉢合わせしてしまうため、先に研究室を探索することを推奨する。

INFO / EVENT

リノリウムの床の上に、丸めた紙と鉄屑が散乱していた。
腐った肉のような臭いが漂っており、不快な気分を助長させる。
【本棚】に並ぶファイルや【スチール製の机】の上にあるパソコンや書類、そして探索者の身の丈ほどはある【直方体の機械】を見る限り、ここが研究室であることは簡単に予想できた。

調査が出来るのは「スチール製の机」「本棚」「直方体の機械」の三つ。

調査:スチール製の机

机の上に【黒鉄のナイフ】が置かれている。
刃だけでなく持ち手や柄も鉄製の黒いナイフ。技能情報は特になし。
スペックは小型ナイフと同様(ダメージ:1D4+db、攻撃回数:1、耐久力:9)。

ACTION

〈目星〉
スチール製の机に置いてある書類の大半はやたらと高度かつ電波交じりの文章だが、その中から実験ログを発見する。

INFO / EVENT

実験ログ
20XX/XX/XX
実験が行き詰まる。理論は分かっているのだが、それを満たす性能の演算装置が手配できない。

20XX/XX/XX
盟友に相談したところ、使い古しの演算装置を貸してくれた。
日々のメンテナンスが手間ではあるが、性能の高さはその手間を補って余りある。

20XX/XX/XX
装置の試運転に成功。まだ「見る」だけだが、いずれは移動すら可能にしたい。
我が父は全ての時空にあまねく存在する。それ故に父と出会うことは難しい。
この装置が完成さえすれば、あらゆる時空を移動し、父と出会い呼び寄せることも出来るはずだ。
……しかし、試運転の最中に見たあのおぞましく醜悪な生物は何だったのだろう。
目が合ったのは気のせいだろうか。嫌な予感がする。

20XX/XX/XX
盟友によると、私が目撃したのは我々とは異なる時間軸に住まう生物らしい。
彼らは非常に執念深く、一度知覚した生物はどこまでも追いかけて食い殺すとも言っていた。
実験が成功したのは喜ばしいが、食い殺されるのはごめんだ。
盟友に教えられた手法で避難用の部屋を作り、対抗策を調べることとする。
脅威が去るまで研究は中止する。やむを得ない。私が死んでは元も子もない。

調査:本棚

日本語だけでなく英語、中国語、その他あらゆる言語で書かれた本が並んでいる。
どれもこれもが古い本であり、ぼろぼろで大した価値は無いように思える。

ACTION

〈図書館〉
直方体の機械の絵が描かれた紙束を見つける。
表紙には「時空転移装置試作機3号 概要」と書かれており、その内容は大まかに言うと以下の通り。

INFO / EVENT

時空転移装置試作機3号 概要
・本装置はあらゆる時空を見渡すことを目的とする
・あくまでも「見る」だけであり干渉は出来ない
・この装置が完成した暁には「干渉」を目的とした第4号を作成する予定である
・電源を入れてヘッドギアを被り、ダイヤルを調整すれば動作する

その他には日々のメンテナンス方法や実験結果の考察などが書かれている……が、
その中でも赤い字で「実験中止。問題が片付くまではこれ以上起動して呼び寄せてはならない。」
と書かれている部分が目立つ。

調査:直方体の機械

探索者の身の丈の程はある大きな鉄製の機械のようなもの。
電源ランプは点灯しているが、何の説明もないボタンが多く、動かすのは困難。

ACTION

〈聞き耳〉
装置の中から「ごぽごぽ」と水音のようなものがかすかに聞こえる。

ACTION

〈機械修理〉
成功すると蓋が開き、緑色の溶液に浮かぶ人間の脳が納められた、円筒型の筒を発見する。
これを発見した探索者は【0/1D3】の正気度喪失
また、この正気度喪失以降、装置は動かなくなる。

ACTION

〈ヘルメットを調べる〉
技能ロール不要。
目元まで覆い隠す大きなヘルメットで、後ろから伸びたケーブルは直方体の機械に繋がっている。
ヘルメットの内側には電極や回路があり、とても複雑な構造をしている。

ACTION

〈装置を起動する〉
ヘルメットをかぶるだけでは特に何も起こらないが、その状態で機械のボタンやダイヤルを操作すると装置が起動する。
暫くの間は真っ暗で何も見えないが、やがてティンダロスの街並みが現れ、ティンダロスの猟犬に発見される。

INFO / EVENT

ティンダロスの街並み
真っ暗な視界にじわりじわりと赤紫の光が侵食する。
光は○○が目にしている光景を少しずつ明らかにして行く。
螺旋の塔の影が赤紫の光を縫い、その微妙な濃淡は、塔が無数に立ち並んでいることを表していた。
いびつに角ばった螺旋の塔は一つとして同じ形のものはなく、塔にまとわりつく雲すら歪み、尖っていた。

○○はふいに視線を感じた。
背後から突き刺さるその気配は決して友好的なものではない。
首筋に生暖かい息がかかる。
じっとりと湿った何かが頬をなぞる。
息も詰まるような悪臭が鼻を刺す。
振り返るよりも先に、被っていたヘルメットが外れて転がり落ちた。
何の変哲もない研究室の風景が目の前に広がる。行動を共にしている探索者もいる。
こちらが現実だ。
それは間違いないはずなのに、先程の光景と、得体の知れない視線が○○の脳裏に焼き付いて離れなかった。

★正気度喪失【1/1D6】

この時探索者を発見した猟犬は、3日目の時間切れ直前、あるいは探索者達が帰ろうとした瞬間に探索者達の元に現れる。
それまでの間に探索者達は何らかの対抗策を見つけなければならない。

それ以上は何もない。基本的にトラップ。

11.廃屋(地下/角のない部屋)

通路の最奥部には円形の鉄の扉があるが、電子ロックが施されており、ロック状態のまま壊れてしまっている。
部屋に入るには〈機械修理〉で電子ロック機能を蘇生させ解除する必要がある。

ロックを解除して部屋に入った探索者達は、以下の光景を目撃する。

INFO / EVENT

鉄と腐肉の臭いが、息が詰まるほどに充満していた。
先の地震の影響か、【部屋】の床や壁には大きな亀裂が走っている。
元々は白かったであろう壁は赤黒い血と青い粘液で歪に彩られており、そして――部屋の片隅には元が何だったのか判別もつかないほどの【肉塊】が転がっていた。

★正気度喪失【1/1D4】

正気度喪失後、「部屋」「死体」の調査が可能になる。

なお、この部屋はティンダロスの猟犬に発見されたヨグ=ソトースの息子が避難場所として改造したもの。
暫くの間は猟犬の侵入を防いでいたものの、猟犬は他種族であるドールの力で地震を発生させ、部屋内に猟犬が顕現するための鋭角を作り出した。

この地震は【08.廃屋(1階)/備考:ティンダロスの猟犬の行動】で明示したものであり、猟犬がヨグ=ソトースの息子を殺害したのは本当につい先程のこととなる。
標的を殺害した猟犬はこの場から姿を消し、二度と現れることはない。

もし【10.廃屋(地下/研究室)】で猟犬を発見していた場合は後々猟犬が現れるが、ヨグ=ソトースの息子を殺害したものとは別個体である。

調査:部屋

大きな亀裂に目を奪われがちだが、よく見ると部屋の角という角が塗り固められて滑らかな曲線となっていることが分かる。
また、血も粘液もまだ新しいもののようで、照明の光でてらてらと輝いている。

【空のガラス瓶】あるいは相応の容器を所持している場合、【青い粘液】を回収できる。
しかし粘液を回収する際に直接触れると〈2D6のPOTとの対抗〉が発生してしまう。
そのため手袋をはめる、服で手をガードする、何らかの道具を使用するなどでPOTロールを回避する必要がある。
POTロールの回避には特に技能は必要なく、RPによる演出のみで可。

ACTION

〈目星〉
亀裂の奥の方に【壊れた六分儀】が落ちているのを見つける。
〈SIZ*5〉に成功すると【壊れた六分儀】を回収することができる。

調査:壊れた六分儀

ただの六分儀と言うには少し不思議な雰囲気があるが、一部のパーツが外れてしまっているように見える。
技能情報は特になし。

【錨を手繰る】の「魔力を効率よく変換する器具」にあたるもの。
ただし壊れてしまっているので修理する必要がある。
修理のパーツは【12.山の奥地】で入手できる。

調査:肉塊

元型は留めていないものの、何らかの生物の死体であることは明らか。まだ温かい。

ACTION

〈目星〉
肉塊の下に紙の切れ端のようなものが見える。
取り出してみるとメモのようだ。
比較的出血の少ない箇所の下敷きになっていたようで、血濡れになっているが読むことは出来る。

INFO / EVENT

血濡れのメモ
あれは異なる時間軸どころか、我が父とは決して相容れない概念の塊だ。
だがそれ故に、上手く加工すれば有用な道具が作れるかもしれない。
盟友の話によると、あれは絶えず有害な粘液を滴らせているという。
ナイフに上手く粘液をコーティングすれば、あれの概念を有した唯一無二の代物が出来上がるのではないだろうか。
だが、未知の粘液を上手く扱うだけの生物学的知識は私にはない。
残念だが諦めよう。今は何よりも生きることを優先すべきだ。

この情報と【黒鉄のナイフ】と【青い粘液】を取得した時点で、〈生物学または医学〉を用いて【黒鉄のナイフ】を【青い粘液】で加工することができると明かす。

〈生物学または医学〉に成功すると【黒鉄のナイフ】は【ティンダロスの牙】に変化する。
この技能ロールは2回まで挑戦でき、失敗すると【黒鉄のナイフ】は【腐臭のナイフ】に変化する。
【ティンダロスの牙】も【腐臭のナイフ】も技能情報は特になく、その違いは武器としての性能のみ。

【ティンダロスの牙】はダメージ:POT20、攻撃回数:1、耐久力:9 であり、【腐臭のナイフ】はダメージ:POT12、攻撃回数:1、耐久力:9。

ACTION 〈医学〉

肉塊を詳しく調べると内臓は食い荒らされてしまっているが、
残った骨格やわずかな特徴から「これが人間ではない異形の生物である」と分かる。

★正気度喪失【1/1D6】

行動:クライマックスより前にナイフで廻谷を刺した場合

廻谷をどうするか、この世界から脱出するかどうかは【13.クライマックス】で決断することが基本的な路線だが、それよりも早いタイミングでこれらの行動を起こすことも可能。

【腐臭のナイフ】または【ティンダロスの牙】で廻谷を刺した場合、廻谷のCONと各ナイフのPOTで抵抗ロールを行う。
結果に応じて廻谷の耐久は減少し、0になれば廻谷は死亡する。
廻谷はナイフの傷と毒に苦しみ、探索者達の殺意に困惑しながらも「死にたくない」と懇願し、やがて死亡するだろう。

廻谷の死に対し、その場に居合わせた探索者全員に【1/1D6+1】の正気度喪失が発生する。

正気度喪失後、探索者達の前にタウィル・アト=ウムルが姿を現す。
彼は廻谷の殺害に礼を言い、探索者達を元いた世界に帰し、【14.エンディング/ED1】に移行する。

行動:クライマックスより前に「錨を手繰る」を唱えた場合

【壊れた六分儀】が修理されているかどうかで呪文の成功率が変動する。
呪文の成功率については【13.クライマックス/行動:出口を作り出す】を参照。

呪文が成功した場合、探索者達は元いた世界に帰ることが出来る。
廻谷を連れて帰ろうとした場合、彼は目の前の非現実的な出来事に恐怖して同行を拒否するだろう。

無理矢理連れて帰ろうとするならば、廻谷を守る運命が作用して、連れ帰ろうとした探索者が転倒したり、第三者が介入してきたり、何らかの事故が探索者に降りかかったりするだろう。
クライマックスより前のタイミングでは廻谷を守る運命は未だ強固なものであり、廻谷を連れて帰ることは不可能。

廻谷を連れて帰ることを諦めて元の世界に帰還した場合は【14.エンディング/ED1】に移行する。

12.山の奥地

08.廃屋(1階)】で地図を入手すると向かうことが出来る。
山の中を進み、地図で示された場所に近づくと、森の奥の方からミ=ゴが姿を現す。

INFO / EVENT

木々の間を、ヒトと同じくらいの大きさの生物が飛んでいた。
生々しい薄桃に彩られた甲殻を持ち、膜のような翼が絶えず振動して浮力を保つ。
頭部は短い触手がさわさわと蠢き、顔の代わりにある渦巻き状の楕円体を覆っていた。
細長い関節肢の先にある鋏をかちかちと鳴らしながら森を漂うその姿は、虫とも動物ともつかない、理解しがたい不快感に満ちていた。

★正気度喪失【0/1D6】

正気度喪失後にミ=ゴは探索者達を発見し、光線銃による威嚇射撃を行う。
09.廃屋(2階)】で入手した合言葉を言わずにミ=ゴを攻撃する、あるいは逃げようとした場合敵と見なされる。

行動:合言葉を言う

合言葉を言った場合、ミ=ゴはたどたどしくも人語を話し、探索者達をミ=ゴの拠点へと案内する。
〈説得〉などの技能ロールは不要で、屋敷にいた怪物の代理など、それらしい説明で納得するだろう。

このルートの場合、ミ=ゴとの交渉を通じた情報収集がメインとなる。
行動によってはミ=ゴは探索者達に不信感を抱き、敵対化する可能性もあるため注意。

行動:ミ=ゴに対して敵対的な行動を取る

ミ=ゴは一旦森の奥へ姿を消し、3D6匹のミ=ゴを引き連れて戻ってくる。
〈隠れる〉に成功しない限りミ=ゴは探索者達を発見し、戦闘が発生する。

「ミ=ゴ」

STR10CON-POW-
DEX18APP-SIZ-
INT-EDU-正気度-
耐久10MP13db0
武器
増援80%次ラウンド開始時に1D3匹のミ=ゴが現れる

ステータスは上記のものを使用し、武器や行動は「マレウス・モンストロルム(P.37)」に準拠する。
(※〈増援〉は本シナリオ独自の行動)

〈ハサミ〉使用時の特殊処理として、ミ=ゴは3匹がかりで探索者を取り押さえ〈組み付き〉に自動成功し、そのままミ=ゴの拠点まで連れて行く。
また、〈電気銃〉で探索者が動けなくなった場合もミ=ゴは3匹がかりで拠点まで連れてゆく。
どちらの場合も、その後拠点から新たに1D6匹のミ=ゴが増援として現れるだろう。

探索者達全員が死亡する、あるいは連れ去られた時点で戦闘は終了する。

連れ去られ、牢屋のようなところに閉じ込められた探索者達は、このままでは脳を取り出され金属の筒の中に保管、研究のために利用されることになるだろう。
〈機械修理〉で牢屋のロックを解除し、脱出を試みることが出来る。

このルートの場合、ミ=ゴから隠れつつ脱出を目指し、その過程で情報を集めることになる。
KPは隠密行動や情報収集に必要な技能ロールを適宜指定し、結果に応じて【イベント:ミ=ゴの拠点にて】以降の情報を開示すること。

イベント:ミ=ゴの拠点にて

この山にある鉱物を採集するために作られた拠点。
洞窟の奥の方に位置し、近未来の研究室のような造りをしている。

INFO / EVENT

洞窟の中とは思えないほどに整備された空間だった。
ドーム状の空間は青みがかった灰色の建材で覆われ、壁面から天井まで大小さまざまなコードが這う。
コンピュータのように見える機械が整然と並べられ、何匹ものミ=ゴが思い思いの作業に打ち込んでいた。

ここまで案内してきたミ=ゴは拠点の片隅に探索者達を案内し、盟友(ヨグ=ソトースの息子)の安否について尋ねたりする。

しかしミ=ゴから探索者達に対して働きかけるのはそれくらいのものであり、情報を引き出すには探索者達から積極的に話しかけていく必要がある。

【壊れた六分儀】を見せた場合、「鉱物の採掘を手伝えば足りないパーツを報酬として渡す」と提案する。
了承すると採掘場まで連れて行かれ、採掘の手伝いをする事になる。
もし【珍しい鉱物】を所持していた場合、採掘の手伝いは不要で即座にパーツを手に入れ、修理もしてもらえる。

採掘の手伝いは〈STR*5または杖〉で判定。
探索者の半数以上が判定に成功するとパーツが貰え、ついでに修理もしてくれて【導きの六分儀】が手に入る。
失敗した場合もパーツはもらえるが、〈機械修理〉で修理する必要がある。

もし採掘をするほどの時間が残されていない場合、ミ=ゴは足りないパーツを持ってくるが、探索者達を完全に信用していない様子でパーツを渡すのを渋る。
〈説得〉に成功すればパーツは貰えるが、〈機械修理〉で修理する必要がある。

イベント:ティンダロスの猟犬と遭遇している場合

猟犬の姿を見たことを話すと「封じ込め棒(キーパーコンパニオンP109)」と「冷凍光線銃(クリオレイ)(キーパーコンパニオンP109)」を貸してくれる。

イベント:猟犬との戦闘

10.廃屋(地下/研究室)】でティンダロスの猟犬を目撃していた場合、3日目の時間切れ直前、あるいは探索者達が帰ろうとした瞬間に猟犬が探索者達の前に現れる。
ティンダロスの猟犬を目撃したことによる正気度喪失の後、猟犬との戦闘に移行する。
猟犬の戦闘データは【08.廃屋(1階)/備考:ティンダロスの猟犬の行動】参照。

ミ=ゴから猟犬対策の道具を借りていた場合、攻撃や回避といった行動の代わりに【封じ込め棒の使用】【冷凍光線銃の使用】が可能になる。

ACTION

封じ込め棒の使用
封じ込め棒を設置する。技能ロールは不要。
5本の封じ込め棒を五角形を描くように設置し終えた瞬間、棒で囲まれた空間を封印する。
つまり5本目の棒を設置する前に猟犬を封印空間に誘導する必要があり、その誘導は【冷凍光線銃】を使用することで行う。

冷凍光線銃の使用
冷凍光線銃を使用する。
猟犬を攻撃する場合の命中率は10%、猟犬の行動を誘導する場合の命中率は50%。

猟犬の行動を誘導する場合、冷凍光線銃は地面に向けて撃って行動範囲を狭めることになる。
冷凍光線銃を撃った後、猟犬は〈DEX*5〉を行い、それに失敗すれば探索者が望む場所に誘導される。
誘導を目的として撃つ度に判定は〈DEX*4〉、〈DEX*3〉……と掛ける数値が下がっていく。
最低値は〈DEX*1〉で、これ以降は何度打っても目標値は変わらない。

また、猟犬の行動範囲を狭めると、探索者達の行動範囲も狭まるということになる。
その為、誘導を目的として撃つ度に探索者達の〈回避〉に-5の修正が累積していく。

猟犬を倒す、あるいは猟犬の封印に成功した時点で戦闘は終了する。

13.クライマックス

3日目の夜、日付が変わる直前に発生。
タウィル・アト=ウムルは探索者達を廻谷の家まで呼び寄せ、探索者達は得た情報を元に廻谷の処遇を決める。

この段階になって、廻谷は自分が何者なのか、何を願ったのか、全て思い出している。
自分の行いを悔やみ、この世界がもうすぐ終わることも理解しているが、妻子とまた平穏な日常を過ごしたい、死にたくないと探索者達に懇願するだろう。

なお何の決断も下さず時間切れとなった場合、この世界は崩壊して探索者達は【14.エンディング/ED2】へ移行する。

行動:廻谷を殺す

【腐臭のナイフ】あるいは【ティンダロスの牙】を使用する場合、刺す対象によって結末が分岐する。

【腐臭のナイフ】または【ティンダロスの牙】で廻谷を刺した場合、廻谷のCONと各ナイフのPOTで抵抗ロールを行う。
結果に応じて廻谷の耐久は減少し、0になれば廻谷は死亡する。
廻谷はナイフの傷と毒に苦しみ、探索者達の殺意に困惑しながらも「死にたくない」と懇願し、やがて死亡するだろう。

廻谷の死に対し、探索者全員に【1/1D6+1】の正気度喪失が発生する。
その後、タウィル・アト=ウムルは探索者達を元の世界に帰し、【14.エンディング/ED1】に移行する。

行動:タウィル・アト=ウムルを刺す

【腐臭のナイフ】【ティンダロスの牙】どちらで刺しても、タウィル・アト=ウムルは少しよろめいたのちヨグ=ソトースに変化する。

INFO / EVENT

ぼこぼことローブの下が不自然に隆起する。
無数の球体が現れては消え、膨張し、分裂する。
瞬く間にローブの中は膨れ上がり、破裂し、そして無限の泡沫が部屋を覆い尽くす。

泡沫のひとつひとつが目も眩むほどの輝きを放つ玉虫色であった。
膨張し、
収縮し、
分裂し、
揺らぎ、
満ち、
見据え、
うねり、
在る。
全ての泡沫が探索者を見ているようで、全ての泡沫が探索者を見ていないようにも思えた。
泡沫はここに在るのか?
あなたはここに在るのか?
自分という存在そのものが揺らぐような、そんな感覚に満たされる。

★正気度喪失【1D10/1D100】

廻谷はヨグ=ソトースの膨張に巻き込まれて全身が腐食・萎縮して死亡し、探索者達は【14.エンディング/ED2】に移行する。

行動:出口を作り出す

呪文【錨を手繰る】を唱える場合、かかるコストは以下の通り。

INFO / EVENT

・移送コストは【1D10】のマジック・ポイントおよび【1D3】の正気度ポイント
・「移送される者全員」が、各自でこれらのコストを消費する
・それとは別に正中時刻以外で呪文を発動する場合の【10ポイント】のMP補填が発生する

【導きの六分儀】がある場合、コストを消費すれば呪文は問題なく発動する。
【壊れた六分儀】のままの場合、探索者達全員が〈幸運/2〉をロールする。
半数以上が成功した場合は呪文が発動し、失敗した場合はコストだけ消費して不発に終わる。

呪文が発動すると、探索者達はタウィル・アト=ウムルの手を借りずに元の世界に帰還して【14.エンディング/ED1】に移行する。

なお、廻谷もコストを消費することで呪文の対象となるが、廻谷が帰ろうとした瞬間タウィル・アト=ウムルがローブの下から触手を伸ばして廻谷を捕らえる。
廻谷はそのままこの世界にとどまり、最終的に死亡する。

もしも触手を振り払って廻谷を連れ帰ろうとした場合、タウィル・アト=ウムルはヨグ=ソトースに変化して探索者達をも飲み込み【14.エンディング/ED2】に移行する。

行動:複合ルート

【行動:タウィル・アト=ウムルを刺す】と【行動:出口を作り出す】は同時に行うことが出来る。
もしも気付きそうになければ〈アイデア/2〉でヒントを与えても良い。

タウィル・アト=ウムルを刺し、呪文【錨を手繰る】を唱えて成功した場合、タウィル・アト=ウムルはヨグ=ソトースに変化するが、探索者達はその姿を見ずに元の世界に帰還して【14.エンディング/ED1】に移行する。

この時廻谷を連れて行こうとした場合、「廻谷に降りかかる因果を変える」を達成していなければ、廻谷はこの世界に未練があり同行を拒否してヨグ=ソトースの膨張に巻き込まれて死亡する。
「廻谷に降りかかる因果を変える」を達成していれば、廻谷は探索者達と共に元の世界に帰還し、【14.エンディング/ED3】に移行する。

14.エンディング

ED1/廻谷が死亡した状態で元の世界に帰還する

INFO / EVENT

――そして、探索者達は気が付くと誰もいない部屋に立っていた。
辺りを見回さずとも、ここが廻谷創の部屋であることはすぐに分かるだろう。
窓の外からは穏やかな午後の光が降り注ぎ、携帯電話は探索者達が元いた年代を示していた。
廻谷創の姿はなく、ただ探索者の足元に壊れた腕時計が転がっているだけだった。

探索者達は元の世界に帰還する。

ED2/時空漂流

ヨグ=ソトースの膨張に巻き込まれた探索者達はばらばらの場所、ばらばらの時代に飛ばされてしまう。

INFO / EVENT

ヨグ=ソトースに触れたあなたは浮遊感を覚える。
玉虫色の瞳をあなたは見た。
玉虫色の瞳があなたを見た。
瞳の奥に無数の時空を見た。
無数の時空があなたを見た。
あなたという存在は幾重にも引き伸ばされ――
――そして一つの時空に集結する。

まず探索者達は各自で〈幸運〉をロールする。
〈幸運〉に失敗すると探索者の身体は宇宙空間に飛ばされてしまう。
ここが宇宙だと認識する程度の猶予はあるかもしれないが、探索者はすぐに意識を失いそのまま死亡する。

〈幸運〉に成功した場合、探索者はそれぞれ地球上のどこかの大陸、どこかの年代に飛ばされる。
大陸は1D10で決定し、年代は西暦の上2桁を1D20、下2桁を1D100で決定する。

1ヨーロッパ大陸
2アジア大陸
3アフリカ大陸
4北アメリカ大陸
5南アメリカ大陸
6オーストラリア大陸
7南極大陸
8北極
9日本
10太平洋の無人島

いくつか例を挙げると以下の通りとなる。

大陸西暦上2桁西暦下2桁結果
51050西暦1050年の南アメリカ大陸
111西暦101年のヨーロッパ大陸
1020100西暦2100年の太平洋の無人島
92016西暦2016年の日本

いずれの場所・年代に飛ばされたとしても探索者の継続は困難だろう。
(シナリオ開始時と全く同じ年代を引き当てたならば継続を認めても良いが、ほぼ確実に起こらない)

ED3/廻谷が生存した状態で元の世界に帰還する

INFO / EVENT

――そして、探索者達は気が付くと廻谷と共に部屋に立っていた。
辺りを見回さずとも、ここが彼の部屋であることはすぐに分かるだろう。
窓の外からは穏やかな午後の光が降り注ぎ、携帯電話は探索者達が元いた年代を示していた。
廻谷はぼんやりとした面持ちで探索者を見て、そして自分の足元を見た。
……その爪先は、虹色の泡となって少しずつ溶けていた。

探索者達は廻谷と共に元の世界に帰還する。

廻谷もまた探索者達の傍にいるが、すぐに体が虹の泡となって消えてしまう。
消えてしまう理由はあの世界に長く居すぎたからかもしれないし、ヨグ=ソトースの呪いかもしれない。真相は定かではない。

体が消えてしまうまでのわずかな時間ではあるが、廻谷は探索者達にいくらかの言葉をかけるだろう。

15.報酬

シナリオ中で得た各種アイテムは、エンディングを迎えた時点で探索者の手元から失われる。

生還

条件ED1・3到達
対象全員
内容2D10の正気度回復

呪文を用いての生還

条件ED1・3到達+【錨を手繰る】を使用
対象全員
内容1D6の正気度回復

輪廻からの解放

条件ED3到達
対象全員
内容・1D6の正気度回復
・アーティファクト「虹の欠片」入手

アーティファクト「虹の欠片」
虹の泡となって消えた廻谷の残滓。
手の平に収まるほどの虹色の半透明の欠片で、振ると欠片の中で虹色の泡が出る。
わずかながら運命に干渉する力を秘めており、1つのシナリオにつき1回だけ〈幸運〉を確定で成功させる。発動タイミングは任意。
ただし、その〈幸運〉が探索者の生死に直結するものであった場合、このアーティファクトは〈幸運〉成功後に消滅する。

猟犬退治

条件ED1・3到達+ティンダロスの猟犬を封印または討伐する
対象全員
内容1D4の正気度回復

奇跡の人

条件ED2到達+元いた世界と同じ時代・場所を引き当てる
対象該当探索者
内容1D10の正気度回復+POW1増加

16.利用規約・更新履歴

利用規約

こちらをご確認ください。

参考書籍

サンディ・ピーターセンほか(2004).『クトゥルフ神話TRPG』.株式会社KADOKAWA.
スコット・アニオロフスキーほか(2008).『クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルム』.株式会社KADOKAWA.
キース・ハーバーほか(2013).『クトゥルフ神話TRPG キーパーコンパニオン 改訂新版』.株式会社KADOKAWA.

連絡先

製作ミナカミ
HPhttps://dara.sakura.ne.jp/
Mailminakamiryu■infoseek.jp

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更新履歴

2023/12/28「03.背景」にシナリオに含まれる要素を追加
2023/10/16他シナリオとレイアウト統一
2021/10/16著作権表記、参考書籍を記載
2020/07/12利用規約を修正
2017/12/23報酬の項にアイテムの持ち帰りについて記載
2017/08/17HTML版に差し替え
2016/09/17公開